【1月23日 AFP】マッサージベルトにプレイステーション(PlayStation)のコントローラー、金の指輪──まるで贈り物のリストのようだが、これはイスラム教スンニ(Sunni)派の過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」が、イラクの制圧地から撤退する際に残していったもので、触れた人を死に至らしめる爆発物が仕掛けられている。

 イスラム国は撤退後でさえも、死の種をまき続けている。イラク北部でイスラム国からの領土奪還を進めるクルド人部隊、そして避難先から自宅に戻った住民らは、不発弾や仕掛け爆弾の恐怖に直面している。

 イラク北部シンジャル(Sinjar)地域にあるSinuni町は、昨年12月にイスラム国から奪還された。この町で活動するクルド人の爆発物処理専門家、マルワン・シド・ヒスン(Marwan Sydo Hisn)氏は「彼らは発想が豊かで、まるで悪魔のようだ」と話す。

「これを見てごらん」。シド氏はスマートフォン上の画像について説明した。「このマッサージベルトは少量の爆薬が詰められた後、完璧に元通りに組み立てられた。誰かがスイッチを入れると爆発する仕組みだ」

 他にも、テレビの内部に火薬が埋め込まれており、プレイステーションのコントローラーを操作すると爆発する仕掛けや、床の目立つ所に置かれた金の指輪に触れると爆発するものなどがある。また、ワイヤを使った罠が張り巡らされたり、ドアノブにつながった起爆装置が仕掛けられていたりする家もあった。

「この地域で彼らが使用した爆発装置24種のリストがある」と話すのは、別の爆発物処理専門家、ダルウィシュ・ムサ・アリ(Darwish Mussa Ali)氏だ。ムサ氏は、車や軍用車両を狙って路上に仕掛けられた手製の爆弾について、「24日間で410個発見した。重さは合計5トン超で、大半が即席爆発装置(IED)だ」と話した。

 シド氏とムサ氏はいずれもクルド人治安部隊「アサイシュ(Asayesh)」出身。シリア国境付近のシンジャル山(Mount Sinjar)の北側地域で爆発物除去にあたる専門家はこの2人だけだ。2人は11年の駐留米軍の撤退前に、米国の爆発物処理部隊から特別な訓練を受けた。だが、危険な作業のための専用機器はほとんど持っていない。シド氏は「特別な防護具もロボットもモバイル通信のための周波数変換器もない。目と経験と工具のペンチだけが頼りだ」と話した。時に1日で30個の爆弾を見つけることもあるという。