【1月26日 AFP】国連(UN)世界保健機関(World Health OrganizationWHO)のマーガレット・チャン(Margaret Chan)事務局長は25日、同機関がエボラ出血熱に不意を突かれたことを認め、将来に同じ過ちを繰り返さないようにするための教訓とするべきとの見解を示した。

 チャン事務局長は異例の開催となったWHO緊急会議の席上で、エボラとの闘いで危機を脱しつつある状況にあるにもかかわらず、現状に甘んじている余裕はないと述べた。またエボラの流行に対するWHOの対応が遅く粗雑であったとの厳しい指摘を認め、同機関の危機管理手法を改革する必要性を訴えた。

 同事務局長は、緊急会議に出席した各国代表を前に「西アフリカにとって、エボラウイルスに襲われるのは今回が初めての経験であり、非常に大きな動揺と驚きをもたらすものだった」と指摘し、「WHOを含む世界の対応があまりに遅かったため、眼前で展開されている事態を認識できなかった」と語った。同会議が開かれるのは、WHO史上で今回がまだ3回目だ。

 また「状況を上向きに転じさせ、最悪の事態を避けられたことを、データは示している」としながら、エボラの流行が「WHOを含む世界に対して、今後、同様の事象の発生をいかに回避すべきかといった多くの教訓を与えた」と続けた。

 さらに「予測が非常に困難な微生物界は、常に驚きを与えるものだ。世界は、不意を突かれて驚きに見舞われる事態を二度と繰り返さないようにするべきだ」とも述べている。

 AFPの取材では「2015年の優先事項は、各国がエボラ感染率をゼロに近づけるのを助けることだ」と述べた。

 史上最悪のエボラウイルス大流行により、1年間で9000人近くが死亡、世界中で大きな健康不安が巻き起こった。死者の大半はリベリア、ギニア、シエラレオネの西アフリカ3国で発生した。

 だが「安全を欠く行為や埋葬、地域社会の抵抗による暴力行為が一回でもあると、その後のに新たな感染症例が急増する恐れがある」とチャン事務局長は指摘した。

 チャン事務局長は「病気の流行と非常事態への迅速な対応を支援するための専用の危険準備金」、WHO中核における危機管理体制の向上、国際的な連携と監視の改善、「これらを実行する能力に対する評価方法の著しい厳格化」などの必要性を訴えた。

「緊急事態への対応を軍隊のように正確に実行する訓練を、自国の要員に施すための支援を各国に提供する必要がある」と同事務局長は語った。

 WHOは同会議で、各国代表者らからの批判の声に直面した。米疾病対策センター(Centers for Disease Control and PreventionCDC)のトム・フリーデン(Tom Frieden)所長は「WHOでは、技術面が政治面によって抑えられることがあまりに多すぎる。この点を見直す必要がある」と指摘した。(c)AFP/Abhik CHANDA