【1月25日 AFP】ウクライナ東部の政府軍が拠点とする要衝の港湾都市マリウポリ(Mariupol)で24日、住宅が密集する市街地が砲撃を受け、市長室によると少なくとも30人が死亡、97人が負傷した。この攻撃後、ドネツク(Donetsk)州の親ロシア派勢力は、マリウポリへの新たな攻勢を宣言した。

 市長室の発表によると、砲撃は朝と正午過ぎにあり、複数の住宅と高層マンションが被害を受けた。現場では砲弾により火災が発生したという。地元住民はAFPの取材に「市民は皆、とてもおびえている。空港は既に親露派の手に落ちた。今度は街そのものが破壊されようとしている」と語った。

 一方、ロシア通信(RIA)は、ドネツク州の親露派勢力を率いるアレクサンドル・ザハルチェンコ(Alexander Zakharchenko)氏が「本日、われわれはマリウポリへの攻勢を開始した」と宣言したと報じた。

 この報道に先立ちザハルチェンコ氏の側近は、市街地への砲撃に責任はないと表明しており、同氏も直接の言及はしなかった。ただ、同氏はマリウポリ港の占拠が「わが方の死者に対する最大の弔いとなるだろう」と述べた。

■親露派は停戦破棄か

 アゾフ海(Sea of Azov)に面した人口およそ50万人のマリウポリは、ロシアが自国に編入したクリミア(Crimea)半島と親露派支配地域を結ぶ陸路に位置する戦略的要衝。

 砲撃を受け、ウクライナのアルセニー・ヤツェニュク(Arseniy Yatsenyuk)首相はただちに国連安全保障理事会(UN Security Council)に対し、ロシアが親露派の攻勢を主導していると非難する決議の採択を要請。ペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko)大統領は、親露派に対する「完全なる勝利」を得るまで戦うと約束する声明を発表した。

 マリウポリは昨年8月にも親露派の攻勢を受けている。撃退には成功したものの大きな被害が出たことで、ポロシェンコ大統領は9月5日の停戦協定に合意した。しかし、停戦後も衝突は続き、1500人以上が死亡。ザハルチェンコ氏は今月23日、停戦を破棄して攻勢をかける方針を示していた。(c)AFP/Oleksandr Stashevsky and Dmitry Zaks