【1月27日 AFP】トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領が、同国を訪問する要人たちを迎える儀仗兵として、2000年にわたるチュルクの諸王朝を象徴する16種類の甲冑(かっちゅう)に身を包んだ兵士たちを登場させた──。まるで低予算の歴史ドラマに出演するエキストラのようなこの「戦士」たちが、実際の歴史とあまりにもはかけ離れているとして問題となっている。

 登場した兵士たちについて、評論家らは、トルコが1923年に建国された現在の共和国よりも、はるかに繁栄したかつて大帝国オスマン朝の歴史を受け継ぐ大国であることをエルドアン大統領は国内外に印象づけたいのだろうと指摘する。

 イスタンブール(Istanbul)・ビルギ大学(Bilgi University)で政治学を教えるイルテル・トゥラン(Ilter Turan)教授はAFPに対して、オスマン朝時代に使用されたオスマン・トルコ(Ottoman Turkish)語の授業を必修化する計画を打ち出すなど、エルドアン大統領は懐古趣味を利用しようとしている。兵士たちもその一環のようだ」と話す。

 これら兵士らが象徴するのは、紀元前2世紀に現在のモンゴルに存在した匈奴(Xiongnu)やムガル(Mughal)帝国、さらにはティムール(Timur)の後継国家など16のチュルク系国家だとされている。

■甲冑姿が物議かもす

 ただ問題は、かつてシベリア(Siberia)南部に存在したチュルク系遊牧民の国家と、アナトリア(Anatolia)半島や欧州へと移動したトルコ民族の国家を結び付けて、両者の間に歴史的一貫性があるとする単純な見方が広く受け入れられているとはいえないということだ

 一方、きらきらと輝くヘルメットをかぶり、やりを握りしめ、うち何人かは人工的なあごひげを付けているようにもみえる兵士たちの姿は、物笑いの種となってしまった。

 甲冑で身を固めた兵士たちは、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス(Mahmud Abbas)議長の歓迎式典がデビューの場となったが、彼らに囲まれた同議長は明らかに困惑した様子を見せた。

 ただ、エルドアン大統領が大真面目であることは、トルコのパムッカレ(Pamukkale)大学で医学部長を務める教授が、マイクロブログのツイッター(Twitter)に兵士たちを嘲笑するツイートを投稿した後、辞職に追い込まれた一件を見ても明らかだ。

 一方、親大統領派の国会議員がこの兵士たちを、「建国以来90年の中断を経てオスマン帝国への回帰を象徴するもの」として称賛したところ、野党の重鎮ウムト・オラン(Umut Oran)議員がこの発言を問題視。過去90年間の歴史を「テレビCMの中断」に例えて表現した発言が国家への侮辱にあたるとして、この与党議員に対して告訴する構えを見せる騒動にまで発展した。