【1月22日 AFP】手に持ったピストルを、ひざまずいた男性2人に向け、引き金を引く少年──イスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」が公開したこの衝撃的なプロパガンダ映像は、新たな世代をその残虐な思想で洗脳するという同組織の狙いを浮き彫りにしている。

 少年は11歳か12歳ぐらいにしか見えない。彼が「処刑」したとみられる2人は、ロシアのスパイであるとされ、その遺体はこの若きイスラム過激派の足元で「ぶざまな格好で横たわった」とのナレーションが入る。

 別の映像で、大きくなったら何になりたいかと問われたこの少年は、「お前たち、不信心者を殺す人になりたい。僕はムジャヒド(聖戦士)になる」と答えた。

 このビデオは、イスラム国が若い世代向けに制作した数あるプロパガンダ映像の一つで、少年らの勧誘や、同組織がイラクとシリアにまたがる地域で創設を宣言した「カリフ制国家」を不滅のものとするために使われている。

 米シンクタンク「ブルッキングス研究所(Brookings Institution)」の中東研究部門ブルッキングス・ドーハ・センター(Brookings Doha Center)のチャールズ・リスター(Charles Lister)客員研究員は、イスラム国の広報素材の中で行われる子どもが関わったり実行したりする暴力行為のレベルは過去6か月間で徐々にエスカレートしており、「このビデオはこれまでで最も過激なものだ」と指摘する。「ここまで暴力的な行為に及ぶ子どもを見せることは、『戦える年齢』にある男性は皆イスラム国の戦いに参加すべきだとの主張を表す一つの手段だ」という。

 あるビデオでは、少年たちが教室での宗教やアラビア語の授業に加え、銃器の扱い方の訓練や肉体の鍛錬を行う様子が映し出される。イスラム国の狙いは明白だ。迷彩服を着た少年が素早くカラシニコフ銃を組み立てると、ナレーターは「彼らは次世代である」と語る。アブドラと名乗り、カザフスタンから来たというこの少年は、ロシアのスパイとされる2人を「処刑」した少年と同一人物だ。