【1月21日 AFP】トルコ・イスタンブール(Istanbul)の空港の監視カメラが記録した低解像度の映像には、一般の観光客と同じようにトルコ入りする女の姿が映っていた。そして1週間後、女はイスラム教スンニ(Sunni)派の過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」が掌握するシリア国内の地域にいた──一度も取り押さえられることなく。

 フランス・パリ(Paris)東部のユダヤ系食料品店に人質を取って立てこもり、警察の突入で死亡したアメディ・クリバリ(Amedy Coulibaly)容疑者の内縁の妻、アヤット・ブーメディエンヌ(Hayat Boumeddiene)容疑者(26)は、なぜこれほど容易にトルコから国境を越えてシリア入りすることができたのか。

 トルコはシリアとの国境の警備強化に取り組んできた。だが国境沿いは、イスラム過激派とその賛同者らにとっては、欧州からシリア入りするための主要路であり続けている。

■「数ドル支払えば誰でも越境できる」

 ブーメディエンヌ容疑者のシリア入りは、トルコ国境の警備状況と、イスラム国の脅威に対するトルコ政府の政治的意志に対し、疑問を再び投げ掛けた。

 ブーメディエンヌ容疑者は1月2日にインスタンブールの空港の税関を通ってトルコ入りし、一度も呼び止められることなくトルコを横断した。1週間後の1月8日、同容疑者がシリア入りしたことが確認された。

「(トルコ当局が)どのように説明しようとも、シリアとの国境は今も開放されている。数ドル支払えば、誰でも問題なく両方向に越境できる」と、匿名を条件に取材に応じた西側の外交官はAFPの取材に語った。

 トルコが最も長い国境を接しているのはシリアだ。トルコ当局もその管理が困難であることを、米国とメキシコの国境を引き合いにして認めている。

 トルコのメブリュト・チャブシオール(Mevlut Cavusoglu)外相は、トルコ政府がシリア国境沿いの警備に「非常手段」で臨んでいるものの、国境を完全に管理することはできていないと語り、「(シリアへの)越境路は常に発見される」と述べた。(c)AFP/Fulya OZERKAN, and Philippe ALFROY in Istanbul