【1月20日 AFP】1994年にアルゼンチンの首都ブエノスアイレス(Buenos Aires)のユダヤ人センターが爆破された事件に関連してアルゼンチンの現職大統領がイランと密約を交わしていたと主張し、19日に議会で証言することになっていた検察官が18日、ブエノスアイレスの自宅マンションで死亡しているのが見つかった。当局者が19日に明らかにした。

 死亡したのはアルベルト・ニスマン(Alberto Nisman)検事(51)。警護官がニスマン氏と連絡を取れなくなった後、ニスマン氏の母親がマンションのバスルームで遺体のそばに.22口径の拳銃があるのを見つけたという。現地のメディアは、この銃はニスマン氏が所有するものではなかったと伝えている。

 検察当局者は、ニスマン氏はこめかみに銃弾を受けており自殺とみられるが遺書はなく、ニスマン氏がなんらかの圧力を受けていなかったか、また銃が誰のものだったか捜査する必要があると語ったと報道されている。

 85人が死亡、約300人が負傷した1994年のユダヤ人センター爆破事件はこの種のものとしては、南米で最も多い約30万人のユダヤ人が暮らすアルゼンチンで最大の事件だった。

 アルゼンチンの裁判所は、レバノンのイスラム教シーア派(Shiite)原理主義組織ヒズボラ(Hezbollah)がイラン政府の命令を受けて起こした事件だったとして、2006年からイランのアリ・アクバル・ハシェミ・ラフサンジャニ(Ali Akbar Hashemi Rafsanjani)元大統領など8人のイラン人の引き渡しを求めている。

 2004年からこの事件の捜査を担当していたニスマン氏は、アルゼンチンのクリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル(Cristina Fernandez de Kirchner)現大統領、エクトル・ティメルマン(Hector Timerman)現外相、カルロス・メネム(Carlos Menem)元大統領(在任期間:1989~99年)がイランの石油を安く輸入するために捜査を妨害したと主張していた。

 ニスマン氏は、キルチネル政権とアルゼンチン当局が、好条件の契約をちらつかせてきたイランの要求に屈したことを示す電話の録音を持っていると述べており、キルチネル大統領とティメルマン外相が「イラン人逃亡犯」を免責して保護する計画を持っていたという証拠を提示することになっていた。

 ある野党党首は、ニスマン氏は「暗殺」されたのだと述べ、自殺だという発表は受け入れられないと述べた。(c)AFP/Paula BUSTAMENTE