■言論の自由と宗教

 さらに事を複雑にしているのは、フランス革命の時代にさかのぼる強い反教権主義の伝統だ。神への冒涜(ぼうとく)行為はこの時代に合法化された。

 一方の英国では、宗教的な信仰や信条を批評する権利はフランスと同様に法律に明記されているが、英国の出版業界は、何を出版するかの判断について自制をきかせる傾向が比較的強い。

 英国の表現の自由に関する専門家、エリック・バレント(Eric Barendt)氏は「そういう意味では、英国はそこまで世俗的な国ではない」と話す。「英国には共同体間の関係を損なうべきではないという意識があり、その背景には(2005年7月7日に起きたような)爆破攻撃への不安もあるかもしれない」

 一方、米国でもフランスと比べ自己検閲の風潮が強いと、米人権団体フリーダムハウス(Freedom House)のカリン・カールレーカル(Karin Karlekar)氏は指摘する。

「何らかの団体から圧力がかかるかもしれないし、メディアの激しい抗議があるかもしれない。また報道各社は(侮蔑的とみなされるコンテンツを)自発的に撤回するかもしれないが、その理由は法律や訴訟ではないだろう」(c)AFP/Marianne BARRIAUX