【1月15日 AFP】米食品医薬品局(US Food and Drug AdministrationFDA)は14日、減量を助けることを目的に脳から胃へ走る神経を電気的に刺激するペースメーカーに似た最新式機器を承認した。

 承認されたのは、米ミネソタ(Minnesota)州に本拠を置く米医療機器エンテロメディックス(EnteroMedics)が開発した「マエストロ・リチャージャブルシステム(Maestro Rechargeable System)」。FDAが8年ぶりに承認した減量用の機器となる。

 この機器では、肥満患者の腹部に外科手術で埋め込まれた電極に、外部から電気パルス発生機器を操作して腹部の迷走神経に信号が送られる。腹部の迷走神経は、胃の伸縮による信号で空腹および満腹を脳に伝える働きをする。

 FDAによると、電気刺激は「脳と胃の間の神経活動を阻害する」が「機器の使用に起因する特定の体重減少メカニズムは不明」という。

 ただ安全性と有効性に関する試験での目標数値を達成できなかった。試験では、この機器を用いて減量させたグループの過剰体重減少率は、機器装着も非作動の対照グループに比べて8.5%高かった。当初の目標は10%だった。

 この臨床試験には、体格指数(BMI)35以上の肥満患者233人が参加。マエストロを作動させた患者グループの約半数は、過剰体重20%以上の減量に成功した。

 FDAの諮問委員会は、18か月に及ぶ試験での、マエストロが一部の患者の体重を減量して維持する助けになっていることが示された結果に基づき、同機器の承認を推奨した。

 FDAは「承認プロセスの一環として、製造者は100人以上の患者を5年間追跡調査し、安全有効性に関する追加データを収集する承認後試験を実施しなければならない。このデータには、体重減少量、有害事象、修正手術と外植、肥満関連症状の変化などが含まれる」と述べている。

 重い副作用としては、吐き気、神経調節因子部位の痛み、嘔吐、外科合併症などがこれまで確認されている。また一部の使用者からは、痛み、胸焼け、嚥下障害、げっぷ、軽度の吐き気、胸痛などが報告されている。

 米マウントシナイ病院(Mount Sinai Hospital)の肥満・栄養専門家、クリストファー・オクナー(Christopher Ochner)氏は、マエストロの承認を「前向きな一歩」と評価した。

「このシステムが電気刺激を伝える対象の迷走神経は、胃と脳の間の信号伝達を調整する上で極めて重要だ」と同氏は指摘する。

「食事摂取量と体重の調節にとって神経ホルモン系が重要なカギを握っているとの認識が高まっており、この系内の信号伝達を変化させる治療法が今後の動向となることはほぼ確実だ」

 FDAが承認した減量用機器は、胃バンドシステムの「ラップバンド(Lap-Band)」、「リアライズ胃バンド(Realize Gastric Band)」に次いで、これで3種類となった。胃バンドは、胃に入れることができる食物の量を制限することで機能する。(c)AFP