【1月12日 AFP】インドネシア・スマトラ(Sumatra)島で失明状態で見つかった雌のオランウータンが、外科手術により視力を回復し、双子の子どもと共に熱帯雨林に帰されたものの、新生活が始まってまもなくそのうちの1頭を見捨ててしまったことが、スイスに本部を置く環境団体パン・エコ(PanEco)が発表した声明で明らかになった。

 パン・エコのスマトラオランウータン保護プログラムによる取り組みの一環として、雌のオランウータン「ゴバー(Gober)」と、今月4歳の誕生日を迎える双子の子ども「ギンティン(Ginting、雌)」と「ガンテン(Ganteng、雄)」は5日、スマトラ島の保安林に帰された。

 しかし同団体の声明によると、森に入ったゴバーは2頭の子どもたちを見守ることに苦労し、すぐにあきらめたらしく、ガンテンだけが置いて行かれてしまったという。ガンテンはその後、同プログラムのスタッフに保護された。「ゴバーとギンティンの母子はうまく適応して森林の上層部を移動し、夜眠るための大きな巣を作ったのに対し、ガンテンは森での最初の晩を寒さと湿気の中、ひとりきりで怯えながら過ごした」

 パン・エコのイアン・シングルトン(Ian Singleton)代表は、ゴバーが息子を見捨てようとしたことに飼育員たちはショックを受けたと語る。「彼女が双子のうちの1頭を置き去りにしようとするなんて、誰も信じられなかった。少なくとも、森に帰してすぐにこうなると予想した者は一人もいない。あまりの早さに、われわれは全員あ然としてしまった」

 同氏によれば、計画通りに行かなかったことは非常に残念だが、ゴバーとギンティンが野生に戻ったことは大成功とみなすことができ、今後はガンテンも最終的に他の2頭と一緒に暮らせるようにしなければならないという。

 ゴバーは2008年、農場で食物をあさっているところを見つかり、スマトラオランウータン保護プログラムに保護されたことで、初めて各紙に取り上げられた。ゴバーはその後、北スマトラのメダン(Medan)近郊にある保護施設に収容され、空気銃で少なくとも62回撃たれて同じく失明していた雄のオランウータン、ルサーとの交配に成功し、双子が生まれた。(c)AFP