【1月9日 AFP】50年以上にわたり国交を断絶していたキューバと米国が、近く国交正常化に向けた交渉を始める──しかし、キューバ革命の指導者、フィデル・カストロ(Fidel Castro)前国家評議会議長(88)は公の場から姿を消したまま沈黙を守っており、支持者の間からは困惑の声が上がり始めている。

 カストロ氏が公の場から姿を消してから8日でちょうど1年が経過した。長引く不在により、体調不良の憶測も出ている。

 国交正常化交渉の開始を控え、米国は拘束していたキューバの工作員3人を解放した。3人は「英雄」扱いされ、帰還の歓迎式典も開かれたが、ここにもカストロ氏は姿を見せなかった。

 キューバ国民の間には困惑が広がっている。ダンサーのドレイリス・ヒメネスさん(20)は「フィデルは英雄がキューバに戻っても姿を見せなかったし、米国との国交正常化についても何もコメントしていない。これには正直驚いている。健康状態がとても悪く、自宅に引きこもっていると噂されているよ」と述べ、政府は国民に何らかの説明をすべきと訴えた。

 カストロ氏は2006年7月、健康上の理由から弟のラウル・カストロ(Raul Castro)氏に、国家評議会議長および閣僚評議会議長などの権限を暫定的に委譲したが、08年に正式に退任を発表している。

 最後に公の場に姿を見せたのは14年1月8日だ。7月には首都ハバナ(Havana)の自宅で中国の習近平(Xi Jinping)国家主席およびロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領とそれぞれ会談し、国営メディアにも時折寄稿していたが、それも10月を最後に途絶えている。

 美容師のパトリシア・リゴンドウさん(42)は「みんな司令官に会いたいと思っている。元気なのか病気なのか、それとも亡くなっているのか…誰にも分からない」とコメントした。(c)AFP