【1月9日 AFP】ジェームズ・クラッパー(James Clapper)米国家情報長官(Director of National Intelligence)は7日、米映画製作大手ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(Sony Pictures Entertainment)に対するサイバー攻撃に関与したとみられる北朝鮮の将軍と、2か月前に会食していたことを明らかにした。

 クラッパー長官は米ニューヨーク(New York)で開かれたサイバー安全保障に関する会議の席で、昨年11月のサイバー攻撃について「米国の利益に反して行われたこれまでで最も深刻なサイバー攻撃」との見方を示し、被害総額が数億ドルに達する可能性を指摘。その上で、米国人2人の解放のため北朝鮮入りした11月7日の夜、朝鮮人民軍偵察総局の金英徹(キム・ヨンチョル、Kim Yong-chol)局長と会食したことを明かした。

 米政府はソニーへのサイバー攻撃に対する報復として、北朝鮮に追加制裁を発動している。朝鮮人民軍偵察総局は、この攻撃に関与したとして追加制裁を受けた3機関の1つだ。

■北朝鮮は「四面楚歌だと思っている」

 クラッパー長官は、会食で提供された手の込んだ12品のコース料理を「今まで食べた中で最高の朝鮮料理の1つ」と振り返りつつ、金局長が会食中、延々と米国の侵略行為や「米国人がいかにひどい人々か」を非難し続けていたと語った。

「会食中、私に向かってはき出された辛辣(しんらつ)な言葉は全て、本気だった」とクラッパー長官は振り返った。

「彼ら(北朝鮮当局幹部)は、全方位から包囲されて四面楚歌にあると本気で信じている。われわれを、今まさに北朝鮮を侵略しようとしている敵として毎日描くことが、北朝鮮を団結させてきた主要なプロパガンダなのだ」

 食事中の会話は、北朝鮮が用意した通訳者を通じて行われた。「奇妙なことに英国風のアクセントだった」とクラッパー長官。金局長は、「私の胸に指を突き付けながら、米韓合同軍事演習は戦争の挑発だと非難し続けた」という。

「もちろん、外交官ではない私の対応は、椅子にふんぞり返り、テーブルごしに彼(金局長)を指さし返すことだった」

 その場は緊張し、金局長の補佐官が「頭を冷やす」ようクラッパー長官に促すほどだった。

 翌日、ある時点でクラッパー長官は北朝鮮側から「もはや米大統領特使とみなさず、安全を保障しない」と通告されたという。だが、午後にはホテルで開かれた「恩赦授与式典」に招かれ、米国人2人の身柄を引き渡されたという。

 ソニー・ピクチャーズエンタテインメントは昨年11月、サイバー攻撃を受け、米中央情報局(CIA)による金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)第1書記暗殺計画を描いたコメディー映画『ザ・インタビュー(The Interview)』の公開中止を要求された。米連邦捜査局(FBI)はサイバー攻撃の背後に北朝鮮がいると断定した。

 北朝鮮は関与を繰り返し否定しているが、サイバー攻撃については称賛している。(c)AFP/Jennie MATTHEW