【1月5日 AFP】ウクライナ最大のテレビ・ネットワークの一つ「インテル(Inter)」が、昨年末に放送した特別番組をめぐり、放送免許取り消しの危機に直面している。高い評価を受けてきた大みそかの年越し番組の中で、ロシアのポップスを多数、モスクワ(Moscow)からの生中継で放送したためだ。

 ウクライナ文化相はこの番組を「反ウクライナ的」だと指摘。また国家安全保障国防会議のオレクサンドル・トゥルチノフ(Oleksandr Turchynov)書記は、ロシア主導の「情報戦争」だと批判している。

 さらに、交流サイト(SNS)のフェイスブック(Facebook)では愛国主義を掲げるグループが、同テレビ局のキエフ(Kiev)事務所を焼き払ってしまえと呼びかけるキャンペーンを展開した。

 しかし、1996年に創設され、「全ての社会集団」に適合することを使命として掲げる同テレビ局がこうした議論に巻き込まれることは初めてではない。この「全ての社会集団」には明らかに、旧ソ連の構成国だったウクライナに暮らす多数のロシア系住民が含まれるためだ。

■批判受けやすい企業体質

 一方、インテルがこうした批判を受ける大きな原因のひとつが、ロシアからの支持を得ていた、失脚したウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ(Viktor Yanukovych)前大統領の政権を主導していた国会議員と、かつてロシアのガス企業と取り引きがあった実業家との間で二分した同社の企業支配権だ。

 主要な出資者の一人は、「ロシアの組織犯罪とつながりがあることを認めている」と、内部告発サイト「ウィキリークス(WikiLeaks)」が米外交筋の情報として掲載しているウクライナ財界の大物、ドミトロ・フィルタシュ(Dmytro Firtash)氏だ。

 また別の主要出資者は、ロシアの国営テレビ局「第1チャンネル(Channel One)」だ。第1チャンネルは、ウクライナ政府は米国務省と米中央情報局(CIA)の支援を受けた「ファシストたち」によって運営されていると批判している。

 インテルへの出資者はいずれも、同テレビ局が放送時間のおよそ半分を、ロシアで制作された連続ホームコメディーか、あるいはウクライナの社会主義時代に少なからず良い思い出を持つ高齢者向けに、旧ソ連時代につくられた映画を割り当てることを要求している。そのためインテルは、極右グループや欧米寄りの指導者たちからの批判の矢面に立たされてきた。