【1月3日 AFP】叩くなら見習い料理人ではなく、まな板を!――フランスの一流シェフたちが、厨房での暴力やいじめに声を上げるよう料理界に呼び掛けている。

 先輩シェフに蹴られたり、やけどをさせられたり、調理器具で殴られたり、セクハラを受けた見習いも。仏レストラン紹介サイト「ル・フーディング(LeFooding)」とグルメ情報サイト「アタブラ(Atabula)」が昨年11月17日に催した会議で、フランスでも超一流といわれるレストランで働く見習いたちの苦境が明らかになった。

 ミシュラン(Michelin)ガイドで二つ星を獲得したシェフで、今は引退しているジェラール・カーニャ(Gerard Cagna)氏も先日、「しごきのような暴力を、ささいなこと」だと黙認する慣習はやめようと呼び掛け、栄誉あるフランス国家最優秀職人賞(Meilleur Ouvrier de France)の受賞歴を持つ一流シェフ5人がこの宣言に署名した。カーニャ氏は厨房での暴力問題について「現代の料理界には真の倫理規定が必要だ」とAFPに語った。

■厨房は典型的な「男の世界」

 こうした問題を提起したのはアタブラだった。昨年4月、ウェブサイト上でフランスの数ある人気レストランに対し、しばしば暴力化する厨房でのいじめについて、沈黙を破って声を上げるよう求めた。

 きっかけとなったのは、パリ(Paris)の三つ星レストラン、プレ・カトラン(Pre Catalan)で修業していた料理人が、厨房スタッフから熱したスプーンを腕に押し付けられてやけどを負ったことだった。その後、プレ・カトランは、やけどをさせたスタッフを厨房から異動させたと発表した。

 だが、アタブラの編集長、フランク・ピネラバルース(Franck Pinay-Rabaroust)氏はウェブサイト上で、このスタッフの罪を問う動きは全くなかったと指摘。その理由として、関係者の沈黙、店の評判が落ちることへの恐れ、証拠が不十分なことを挙げた。その一方で、厨房での暴力問題を取り上げたことに感謝を示す電子メールが100~200通も寄せられたという。

 厨房で暴力が横行していることについてピネラバルース氏は、料理人たちはかなり若く、厨房は「非常に男くさい場所」だと述べた。「そこでは料理人たちの昇進争いがある。一番上に立つシェフたちが厨房にいない場合が増えており、二番目に立つ料理人が厨房を支配し、誰がボスなのかを見せつけようとする。男性ホルモン的な問題だ」