【12月18日 AFP】米アラスカ(Alaska)州の記録的な高気温に北極全体の平均を下回る積雪量、そしてグリーンランド(Greenland)での夏季の過剰な氷融解──これらはすべて米海洋大気局(US National Oceanic and Atmospheric AdministrationNOAA)が17日に発表の年次報告書に記された地球温暖化に関する2014年中の事象だ。

 報告書は、13か国の科学者63人がまとめた「北極圏報告カード(Arctic Report Card)」の2014年度版で、米サンフランシスコ(San Francisco)で開かれた米国地球物理学連合(American Geophysical Union)総会で発表された。

 報告書が明らかにしたところによると、北極地方では現在もなお、より低緯度地域に比べて2倍以上の速さで温暖化が進行しており、これは「北極増幅(Arctic Amplification)」として知られる傾向が続いていることを示しているという。一方で同報告書には、科学者らを驚かせるような新たな内容はほとんど含まれていなかった。

 報告書の編集責任者で、米海軍研究局(Office of Naval ResearchONR)北極・地球予測(Arctic and Global Prediction)部門の科学顧問と計画責任者を務めるマーチン・ジェフリーズ(Martin Jeffries)氏は「新記録が毎年更新されることなどは見込めない。北極が今も変化し続けていることには目を見張るまでもない」と語る。

 北極の気温は、過去30年間の平均に比べて高くなる傾向が続いている。この現象が重要になる理由は、これらの気温が局地および地球規模の変化の指標および要因として働くことに加え、海氷の減少に伴って生き残りが困難になるホッキョクグマの生息環境を変化させるからだ。

 NOAAのクレイグ・マクリーン(Craig McLean)長官補は「気候変動は北極に不均衡な影響を及ぼしている。北極は過去30年間で緑化と気温上昇が進み、輸送、エネルギー資源の採掘、漁業などにとってますます利用しやすい環境になってきている」と指摘し、「温室効果ガスの増加に起因するこれらの変化は、重大な難題を生み出している」と続けた。

■自然による変動

 昨年は、北極の氷の厚みがわずかに増加したことや、海氷の量が人工衛星による観測が始まった1979年以降で6番目の少なさにとどまったことなどの、多少の改善がみられた。だが報告書によると、気温の経時的な年次差および地域差は「自然の無作為な変動に起因する」場合が多いことが、現在進行中の研究で判明しているという。

 報告書の対象期間は、2013年10月から2014年9月までとなっている。同期間中、北米とロシア中部では極めて寒冷な気温となる一方、アラスカや北欧では異常な暖気が訪れた。報告書は、「アラスカでは、1月平均を10度上回る異常気温が記録された」としている。

 春季の北極全体の積雪量は1981~2010年の平均を下回り、ユーラシア(Eurasia)大陸では4月の積雪量が記録史上最も少なかった。

 報告書によると、6月の北米の積雪量は記録史上3番目に少なく、「ロシア西部、スカンディナビア(Scandinavia)、カナダの亜北極圏、アラスカ西部などの地域では、積雪量が平均を下回り、春季の気温が標準を上回ったことが原因で、雪が通常より3~4週間ほど早く消えた」という。

 北極の氷の厚みは2013年と比較してわずかに増えたにもかかわらず、「時代が最も古く、厚みが最大級(4メートルを超えるもの)で、回復力が最も高いこれらの氷の量は1988年当時に比べてはるかに少ない」という。1988年当時、最古の氷は積氷全体の26%を占めていたが、現在は10%にすぎない。

 北極全体の海面温度は増加しており、特にアラスカ北西のチュクチ海(Chukchi Sea)では特にその傾向が強い。同海では、海面温度が過去10年に0.5度の割合で増加している。

 グリーンランド氷床の融解量は、夏季の大半の期間で平均を上回ったが、氷床の全質量は2013年~2014年で横ばいとなった。

 氷は融解が進むにつれ、日光を反射する能力が弱くなる。これはさらなる氷の消失につながる。2014年夏季のグリーンランド氷床の白色度は2000年以降で2番目に低く、8月には日光反射度が史上最も低くなった。(c)AFP/Kerry SHERIDAN