【12月16日 AFP】オーストラリア・シドニー(Sydney)のカフェで起きた立てこもり事件は武装した警察官が突入するも人質2人の死亡という衝撃的な結末を迎え、オーストラリアは犠牲者を悼む悲しみに包まれている。

 一方、捜査当局はイラン生まれの容疑者には過激思想や暴力行為の前科がありながら、野放しにされていた経緯について調査を開始した。

 立てこもり事件は、発生から約17時間たった16日未明、容疑者の発砲を機に武装した警官が現場のリンツ・ショコラ・カフェ(Lindt Chocolat Cafe)に突入。容疑者を射殺して終結したが、オーストラリアの人々は人質2人が死亡したとのニュースで目覚めることとなった。

 人質となっていた17人のうち、死亡したのはカフェの店長のトーリ・ジョンソン(Tori Johnson)さん(34)と、法廷弁護士で3児の母親だったカトリーナ・ドーソン(Katrina Dawson)さん(38)。

「英雄」と称えられた2人の犠牲者を悼んでシドニーの金融街の現場近くに設けられた仮設の献花場には、次々と人々が訪れて花を手向けた。地元のイスラム教徒コミュニティの指導者らも献花に訪れた。

 事件では、ほかに人質6人が負傷しているが、うち75歳の1人を含む女性3人は銃で撃たれて負傷した。また妊娠していた女性2人も予防措置として病院に搬送された。

 一方、各メディアがマン・ハロン・モニス(Man Haron Monis)容疑者(50)と伝えている立てこもり犯について、当局者らは複数の暴力犯罪容疑で逮捕されながら保釈されていたことを認めた。

 ニューサウスウェールズ(New South Wales)州のブラッド・ハザード(Brad Hazzard)州司法長官は記者会見で、モニス容疑者が元妻殺害での従犯など、複数の犯罪容疑で起訴されていながら自由の身にあったことには重大な疑問点があるとし、どのような抜け穴があったのか綿密に検証するよう、州および連邦政府の各当局に要請したことを明らかにした。(c)AFP/Martin PARRY