【12月15日 AFP】中国の裁判所は15日、18年前に起きた強姦(ごうかん)殺人事件で死刑判決を受け、既に刑が執行された当時18歳の少年について、冤罪(えんざい)だったとして再審無罪判決を言い渡した。中国で判決の確定後に再審が行われるのは異例だ。

 このほど無実が認められたホクジルト(呼格吉勒図、Hugjiltu)元死刑囚(当時18)は1996年、内モンゴル自治区(Inner Mongolia Autonomous Region)で死刑を執行された。ところが、2005年になって別の男が犯行を自白し、冤罪が疑われていた。

 内モンゴル自治区の省都フフホト(呼和浩特、Hohhot)の高等法院(高裁)は声明で、当時の有罪判決について「事実と一致せず、証拠が不十分だった」と指摘し、無罪を宣言した。ホクジルトさんの供述は検視報告書の内容や他の証拠と一致せず、裁判で提出されたDNA鑑定の結果もホクジルトさんと犯行を結び付ける決定的証拠ではなかったという。

 ソーシャルメディア上には、同裁判所の副院長(副所長)がホクジルトさんの両親に謝罪し、見舞金として3万元(約58万円)の支払いを提示する様子を撮影したとされる画像が出回った。

 共産党が支配する中国の司法制度において、刑事裁判で有罪判決が出る確率は100%に近い。一方で、公正さが怪しまれる状況で自白が引き出されることが当たり前のようになっている。

 国営英字紙チャイナ・デーリー(China Daily)の11月の報道によれば、ホクジルトさんは48時間にわたる尋問の末、織物工場のトイレで被害女性をレイプし窒息死させたことを自白した。死刑は事件のわずか61日後に執行されたという。家族は10年近く無実を訴えていたが、11月に再審手続きが開始されたという。

 今回の再審は、先に中国共産党指導部が「中国の特性に適した」法による支配を打ち出したことを受けて実施されたものとみられる。ただし、専門家らは中国政府の新方針について、司法の独立ではなく、裁判所に対する中央政府の支配力を強化するものだとして警鐘を鳴らしている。(c)AFP