【12月8日 AFP】たどり着くのが困難な上に暗いことを売りにする観光地は多くないが、アフリカ初の「星空保護区(Dark Sky Reserve)」に指定されたナミビアのナミブ砂漠(Namib Desert)は、星空サファリ目当ての天文ファンらを引きつけている。澄み渡る砂漠の空に鮮やかに広がる満天の星は、壮大な宇宙を見せつけ圧巻だ。

 しかし、その壮観な星空の下で今、星たちが商売を呼び込んでくれることを期待して、ホテルやなどの宿泊施設がしのぎを削っている。時空の深淵(しんえん)をのぞこうとする天文ファンらのために、多くのロッジは研究者が使うプロ仕様の望遠鏡を購入し、天文学者たちを住み込みで雇っている。

 市場調査会社ユーロモニター(Euromonitor)によれば、都市化が進むにつれ、星空を楽しむ「アストロ・ツーリズム」と呼ばれる観光が成長している。特に注目されているのがアフリカだ。

 ミーシャ・ビッカスさんは昔は豪シドニー(Sydney)の天文観測所でガイドをしていた。今はナミブ砂漠のロッジに住んでいる。「ここを訪れる人のほとんどは、砂漠や自然保護区の動物を見に来る。多くの人は望遠鏡をのぞこうとも、夜空を見上げようともしない」というビッカスさんは、見たい星に自動的に焦点が合う望遠鏡を導入している。しかし、ナミブ砂漠では実に望遠鏡さえ要らない。

 本来、地球上から見えるはずの星空の約半分は、人工の光によってかき消されている。日中のナミブ砂漠には一面、酸化鉄の赤い砂漠とイエローベージュの砂丘、輝く山々が広がり、世界最古の砂漠といわれるにふさわしい姿を見せている。しかし、夜の漆黒のような空には、車で半日かかるナミビアの首都ウィントフーク(Windhoek)よりも近くに天の川銀河(Milky Way)があるように見える。赤く輝く火星やマゼラン星雲(Magellanic Clouds)、ガス星雲などが裸眼で観察できる。

 ナミブ砂漠中央に位置する「ナミブランド(NamibRand)」と称される一帯は、その夜空の特別な魅力を認められて2012年、アフリカ初の「星空保護区」に指定された。同様の場所は世界にいくつかある。ニュージーランド南島アオラキ・マッケンジー(Aoraki Mackenzie)の星空保護区、アイルランド南西部沿岸のイベラ半島(Iveragh Peninsula)などだ。ハワイやチリも、アストロ・ツーリズムの人気観光地となっている。

 夜空の明るさを格付けするために科学者たちが用いているのは「ボートル・スケール(Bortle Scale)」といわれる尺度だ。都心の明るさは最高値の9で、これはオリオン座のような明るい星座でさえもぼんやりと見える程度か、まったく見えない程度を意味する。一方、ナミブ砂漠のような夜空は最高級の1に相当する。金星や木星が明るく輝いて見える。ナミブ砂漠では良好な天候と極端に乾燥した大気が、地平線まで透明な夜空を確保している。(c)AFP/Andrew BEATTY