【12月8日 AFP】地球から遠く離れた冥王星の接近観測に史上初めて挑戦する米航空宇宙局(NASA)の無人探査機「ニュー・ホライズンズ(New Horizons)」が6日、休眠状態から目覚め、地球との通信を再開した。9年間に及ぶ旅を経て、来年1月から探査を開始する。

「ニュー・ホライズンズは正常に機能しており、地球から約48億キロ離れた深宇宙を静かに飛行している。だが、休眠はもう終わりだ」。米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)応用物理学研究所(Applied Physics Laboratory)でニュー・ホライズンズの管制を統括するアリス・ボウマン(Alice Bowman)氏は、このように述べた。

 2006年1月に打ち上げられたニュー・ホライズンズは、旅程の約3分の2に相当する1873日間を休眠状態で過ごしていた。電力を保持し、地上からの監視に必要なリソースを最小限に抑えるためで、NASAの技術チームが数か月ごとに再稼働させてシステムの機能状況をチェックしていたほか、ニュー・ホライズンズからも週に1回メッセージが地球に自動送信されていた。

 ニュー・ホライズンズに課せられた任務は、太陽系の外縁部近くに位置し、5個の衛星を持つ氷に覆われた天体、冥王星の探査だ。2015年1月、冥王星から約2億6000万キロ離れた地点から観測を開始。楕円軌道を描いて周回する冥王星に7月に最接近し、近接探査を行う予定となっている。

 公転周期247.7年、直径約2300キロの冥王星は、地球の衛星である月より小さく、質量は地球の約500分の1しかない。国際天文学連合(International Astronomical UnionIAU)は2006年、冥王星を惑星から「準惑星」に格下げし、太陽系の惑星を8個とした。

 今回の探査ミッションでニュー・ホライズンズは、冥王星の地形と、最大の衛星「カロン(Charon)」に関するデータを収集する。成功すれば、地球からの観測が難しい不鮮明な冥王星の表面の様子を詳細に観測できるようになる。

 ニュー・ホライズンズには赤外線・紫外線分光計、多色カメラ、高解像度望遠カメラ、宇宙塵(じん)検出器など7種類の機器が搭載されている。電力源は全て放射性同位体熱電気転換器(RTG)で、発電量は100ワット電球2個にも満たないという。

 ニュー・ホライズンズは、6か月に及ぶ冥王星探査を終了した後、海王星の軌道の外側にあるカイパーベルト(Kuiper Belt)に位置する別の天体の通過観測も行う計画だ。カイパーベルトは46億年前の太陽系誕生時の残骸で形成された広大なリング状の領域で、冥王星から約15億キロの距離にある3つの天体が観測候補に上がっている。(c)AFP/Jean-Louis SANTINI