【12月4日 AFP】植民地時代のインドネシアで発掘されていた約50万年前の貝殻の化石に史上最古の「彫り刻んだ跡」を発見したとの研究論文が3日、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 オランダのライデン大学(Leiden University)のジョゼフィーヌ・ヨールデンス(Josephine Joordens)氏率いる研究チームによると、ジグザグ模様に刻まれたこの跡は、貝殻が道具として使われた証拠とともに、謎の初期人類「ホモ・エレクトス(Homo erectus)」に関して再考するきっかけになるはずだという。

 研究チームは、東ジャワ(East Java)州を流れるソロ川(Bengawan Solo River)沿いにあるトリニール(Trinil)遺跡で発見されたカラスガイの貝殻の化石166個を詳細に調べ、今回の発見に至った。

 同遺跡は、これまでに最も驚くべき発見の一つがなされた場所でもある。オランダ人古生物学者、ユージン・デュボア(Eugene Dubois)氏が、1891年にこの地で「ジャワ原人(Java Man)」を発見している。

 古生物学者らは最終的に、ジャワ原人を約190万年前~約15万年前に生息していたヒト科のホモ・エレクトスあるいは「直立人」として分類した。だが根拠とされた化石証拠は不完全で、大きな議論を巻き起こした。

 研究チームは現代の最新技術を駆使して、地元資料館に収蔵されているトリニール遺跡の貝殻の再調査を実施。貝殻の中にあった堆積物を炭素測定法で年代測定した結果、貝殻は今から43万年前~54万年前のものであることが判明した。

 また全体の3分の1の貝殻には、二枚貝の貝柱の一つの根元があった箇所に興味深い穴が開いているのが見つかった。

 カワウソ、ネズミ、サルなど鋭い歯を持つ動物が貝の身を食べるために貝殻に穴を開けた可能性もあるが、研究チームによると、貝を食料としていたホモ・エレクトスの行為である可能性の方がより高いという。

 研究チームは、同様の軟体動物属の生きた二枚貝の貝殻に、先のとがった道具を使って同じ箇所に穴を開ける実験を行った。実験の結果、貝殻に穴が開くとすぐに道具の先で貝柱が傷つけられるので、貝殻を壊さずに容易に貝を開くことができた。