【11月28日 AFP】オーストラリア・シドニー(Sydney)郊外で27日、葬儀会場から遺体を乗せた霊柩(れいきゅう)車がカージャックされるという珍事件が起きた。被害に遭った一家が28日、豪メディアに語った。

 ヘイリー・ウエスト(Hayley West)さんと夫のトビアス・リチャードソンさん(Tobias Richardson)さんは、シドニー西郊のブルーマウンテンズ(Blue Mountains)にある学校の校舎で、夫の兄セス・リチャードソン(Seth Richardson)さんの葬儀の準備をしていた。そのとき、茂みから飛び出してきた1人の男が霊柩車に乗り込むと、セスさんの遺体を乗せたまま走り出したという。

「ちょうど私たちがロビーで話していたときでした。葬儀社の係が棺を運ぶストレッチャーを準備していたところ、男が茂みから飛び出し、霊柩車に飛び乗ってエンジンをかけたんです」と、ヘイリーさんはオーストラリア放送協会(Australian Broadcasting CorporationABC)のラジオに語っている。

「葬儀社のスタッフが(霊柩車の)窓を叩き『おい、何をやってるんだ。霊柩車だぞ』などと言って止めようとしました。私たちはただ立ち尽くして『どうしよう、霊柩車が盗まれてしまう』と思っていました」

 トビアスさんが急いで自分の車に乗って霊柩車を追い掛け、その間にヘイリーさんが警察に通報した。突然始まったカーチェイスを人々は心底驚いた様子で見つめていたという。警察によれば、霊柩車が学校のグラウンドまで出たところでトビアスさんが自分の車で行く手をふさぎ、それ以上の逃走を阻止した。

「トビアスが車から飛び降りて『何てことをしてくれるんだ』と怒ると、霊柩車を奪った男はしおらしく『病院に行かなくちゃならないんだ』と言いました」とヘイリーさん。5分後に到着したニューサウスウェールズ(New South Wales)州警察の警察官が取り押さえた男は49歳で、認知症を患っており、同日早朝に福祉施設から行方が分からなくなっていたという。

 葬儀はその後、予定通り行われた。ヘイリーさんは義兄のセスさんが生きていれば事件を面白がって「大傑作だと大笑いしたでしょうね」と述べている。(c)AFP