【11月28日 AFP】詩人の顔を持つロンドン警視庁(Metropolitan Police ServiceScotland Yard)のエリート警視「アダム・ダルグリッシュ(Adam Dalgliesh)警視」シリーズなどの作品で知られる英国の推理作家P・D・ジェイムズ(P. D. James、フィリス・ドロシー・ジェイムズ)さんが27日、死去した。94歳だった。

 1962年のデビュー作以来ジェイムズさんの作品を世に出してきた英大手出版社フェイバー・アンド・フェイバー(Faber and Faber)は、故郷の英オックスフォード(Oxford)の自邸で安らかに亡くなったと発表し「世界の偉大な作家の1人」に追悼の意を表した。

 人気推理作家として数々の国際賞も受賞したジェイムズさんが執筆活動を開始したのは30代後半。デビュー作は42歳のときに発表した「女の顔を覆え(Cover Her Face)」だった。その後、2021年の英国を舞台にしたディストピア小説で、映画化されアカデミー賞(Academy Awards)候補にもなった「人類の子供たち(The Children of Men)」(映画邦題「トゥモロー・ワールド」)など20作以上を発表。

 最近では、英作家ジェーン・オースティン(Jane Austen)の作品が好きだったというジェイムズさんが、オースティンの「高慢と偏見(Pride and Prejudice)」の数年後という設定で書いた「高慢と偏見、そして殺人(Death Comes to Pemberley)」(2011年)がベストセラーとなった。

 ジェイムズさんは1920年にオックスフォード生まれた。幼少期は苦労が多く、10代には母親が精神病院に収容され、16歳で学校を辞め事務職員として働き始めた。物を書くことには常に関心があったが、一家は定収入を必要としていたため公務員となり、精神科を含む英国民保健サービス(National Health ServiceNHS)の職員として、また内務省では警察や捜査関連機関に勤務し、法医学関連の仕事にも携わった。ジェイムズさんは推理小説を書く上でこうした職歴を生かしてきた。

 夫のコナー・ホワイト(Connor White)さんは精神疾患でたびたび入院し、1964年に薬物とアルコールの過剰摂取で亡くなっている。夫妻には2人娘がおり、さらにジェームズさんは多くの孫やひ孫に恵まれた。(c)AFP/Alice RITCHIE