【11月21日 AFP】世界で最も多くの称号を持つ貴族とされ、スペインで最も裕福な女性といわれたアルバ公爵夫人(Duchess of Alba)のマリア・デル・ロサリオ・カイエターナ・フィッツハメス・スチュアルト(Maria del Rosario Cayetana Fitz-James Stuart)さんが20日朝、同国南部セビリア(Sevilla)の自邸で死去した。88歳だった。代理人によると、家族に囲まれた最期だったという。

 1926年3月28日、首都マドリード(Madrid)生まれ。縮れた髪と色鮮やかな服装センスで知られ、スペイン国民からは「カイエターナ(Cayetana)」と呼ばれていたアルバ公爵夫人は、広大な土地やいくつもの邸宅、ゴヤ(Goya)やベラスケス(Velazquez)といった巨匠たちの絵画など膨大な資産を所有しており、「スペインの北端から南端まで、自身の土地から外れることなく行くこができる」とまでいわれた。

 また祖先たちの複雑な婚姻関係から、他にも40を超える称号を持っており、ギネス世界記録(Guinness World Records)から「世界で最も多くの称号を持つ貴族」として認定されていた。

 敬虔(けいけん)なカトリック教徒でありつつ、ポップ音楽や闘牛を好み、装いだけではなく私生活も華やかだった。スペインの芸能ニュースをにぎわし、結婚は3度。1人目と2人目の夫とは死別している。

 1947年10月に最初に結婚した相手は、ソトマヨール公爵(Ducado de Sotomayor)の息子ドン・ペドロ・ルイス・マルティネス・デ・イルホ(Don Pedro Luis Martines de Irujo)氏で、1000人が出席した祝宴を当時の米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は「スペインで王制廃止以来、最も凝った社交行事」と表現した。この祝宴の際には地元の貧しい住民1000人にも食事が振る舞われている。公爵が1972年に死去してから6年後、11歳年下だったイエズス(Jesuit)会の元司祭ヘスス・アギーレ(Jesus Aguirre)氏と再婚し、スぺインの上流社会を憤慨させた。

 最近、国際的に注目を浴びたのは2011年。6人の子どもたちの反対を押し切り、25歳年下の公務員(当時)アルフォンソ・ディエス(Alfonso Diez)さんと結婚し、式ではフラメンコを踊った。

 公爵夫人の子どもたちに結婚を承認させるために、ディエスさんは公爵夫人の富の相続権を放棄した。また結婚直前に夫人は所有する資産の大半を分割し、子どもたちに生前贈与していたが、最後まで自分が管理していた。総資産価値は最高35億ユーロ(約5000億円)といわれている。

 2011年に出版されベストセラーとなった回顧録で、アルバ公爵夫人は自分の墓碑に「感ずるがままに生きたカイエターナ、ここに眠る」と書いてほしいと述べている。(c)AFP