【11月20日 AFP】(一部更新)インドの警察当局は19日、同国北部の広大な僧院に数千人の信者を従えて立てこもっていた教祖を、信者らとの激しい攻防の末に逮捕した。僧院に突入した警官隊によって女性4人と子ども1人の遺体が敷地内で発見されている。

「神人」を自称するランパル・マハラジ(Rampal Maharaj)容疑者(63)は、殺人の共謀など複数の容疑で指名手配されていたが、裁判所が逮捕状を発行してから数日間にわたり、首都ニューデリー(New Delhi)から北へ175キロ離れたハリヤナ(Haryana)州内にある自身の僧院に隠れていた。僧院では、信者らが石や火炎瓶を投げるなどして警察に激しく抵抗していた。

 18日、警官隊は放水銃や催涙弾を使い、信者らが厳重に警備する僧院に突入。それから24時間以上が経過した19日夜に、ようやくランパル容疑者の身柄を拘束した。また、信者500人以上も逮捕したが、うち250人はランパル容疑者を守る「私兵」だとされる。また警察は翌20日現在、敷地内に隠されている可能性がある爆発物の捜索を行っているという。

 警官隊との衝突で負傷した信者100人以上が病院で治療を受けている。地元警察がAFPに語ったところによれば、ランパル容疑者も僧院から救急車で医療機関へ護送され、裁判所に出廷する前に検査を受けることになるという。

 ランパル容疑者の逮捕に先立ち、ハリヤナ州警察は19日、突入した警官隊が僧院内で女性4人と生後1年半の乳児1人の計5人の遺体を発見したと発表していた。乳児は自然死とみられるが、女性4人の死因や死亡時期は不明で、検視を行うという。

■15世紀の神秘主義者の生まれ変わり?

 敷地面積4.8ヘクタールの僧院に立てこもって信者の人数ははっきりしていないが、警察は2000人ほどが僧院内にいたとみている。18日に警官隊が突入した際には多数の人々が僧院から逃げ出してきたが、意思に反して僧院内に閉じ込められていたと訴える人も多いという。

 脱出してきたという男性(34)は、慢性的な背中の痛みを直してもらおうとランパル容疑者の元を訪れたが、僧院を警備する信者らに阻まれて外に出ることができなかったとAFPの取材に放した。

 ランパル容疑者は2005年に周辺の村の住民らと対立した際、村に放火するよう信者に命じたとされ、殺人共謀罪や民衆扇動罪、法廷侮辱罪などの容疑で再三出廷を命じられていたが、ことごとく拒否していた。村への放火では1人が死亡、多数が負傷している。

 技術者だったランパル容疑者は、15世紀のインドの神秘主義者で詩人のカビール(Kabir)の生まれ変わりを自称し、インド全土で病気の患者や家族関係に問題のある数万人を救ったと主張している。容疑については否認している。信者は、他宗教の信仰や飲酒、喫煙、密通、ギャンブル、歌や踊りを禁じられ、菜食を課されていた。(c)AFP/Bhuvan BAGGA