【11月9日 AFP】メキシコ南西部ゲレロ(Guerrero)州イグアラ(Iguala)市で今年9月26日に6人が殺害され教員養成大学の学生43人が行方不明になっている事件で、容疑者の麻薬組織「ゲレロス・ウニドス(Guerreros Unidos)」のメンバー3人が43人を殺害し、遺体を焼いて川に捨てたと供述し、メキシコはここ数年の麻薬戦争の中で最悪の大量殺人事件に直面している。

 3人の容疑者は、麻薬組織とつながりのある警察からイグアラとコクラ(Cocula)の町の間の場所で学生たちを引き渡されたと供述している。

 録音された供述の中で容疑者らは43人を2台のトラックに乗せて近くのごみ埋め立て処分場に運び、そこで43人を殺害して燃料や木、タイヤ、プラスチックを使って14時間にわたって遺体を焼いたと話している。

 学生たちは資金集めのためにイグアラに来ていたが、帰りは4台のバスを乗っ取り無断で運転して帰路に着こうとしていた。こうしたバスの乗っ取りは、左派運動の拠点として知られる学校の若者たちがよく行っている。そして学生たちはバスに分乗し、大学があるアヨツィナパ(Ayotzinapa)に帰る途中に襲撃された。

 当局は、事件当時イグアラ市長だったホセ・ルイス・アバルカ(Jose Luis Abarca)容疑者が、妻のスピーチを妨害されることを恐れて、警察に学生たちの襲撃を命じたとしている。警察官たちは学生たちが分乗していたバスに向かって発砲し、学生3人と近くにいた3人が死亡した。

 この事件でこれまでにアバルカ容疑者とその妻のマリア・デ・ロス・アンヘレス・ピネダ(Maria de los Angeles Pineda)容疑者、警察官36人、ゲレロス・ウニドスのメンバー数人など74人が逮捕されている。

 供述内容が事実ならば、2006年以降8万人以上が死亡し、約2万2000人が行方不明になっているメキシコの麻薬組織に対する闘いの中で最悪規模の大量殺人となる。

 メキシコのエンリケ・ペニャニエト(Enrique Pena Nieto)大統領は同国でまん延している殺人の連鎖をようやく抑え込みつつあると主張していたが、今回の事件でメキシコは国際的に批判され、ペニャニエト政権に最大の危機をもたらしている。

 学生たちが通っていたアヨツィナパの教員養成大学では、行方不明になっている学生の家族や親族がDNA鑑定の結果が出るまでは学生たちが殺害されたとは信じないと、疲れ果てた様子で話した。行方不明になっている学生のおじだというメリトン・オルテガ(Meliton Ortega)さんは「政府は供述だけに基づいて事件の幕引きをしようとしているのではないか。非常に無責任だ。確定した事実はまだ何もない」と述べた。(c)AFP