【11月7日 AFP】2010年にパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)へ向かっていた支援船をイスラエル軍が襲撃し、トルコ人援助活動家10人が死亡した事件について、オランダ・ハーグ(Hague)の国際刑事裁判所(International Criminal CourtICC)は、戦争犯罪が行われたと信じるに足る「合理的な根拠」はあるものの訴追は見送るという方針を示した。同裁判所の主任検察官が6日発表した。

 2010年5月31日未明、イスラエル海軍によるガザの封鎖を突破しようとしていた6隻の支援船団をイスラエル軍が急襲し、うち1隻に乗船していたトルコ人9人が死亡、後にその時の傷が原因でさらに1人が死亡し、合わせて10人のトルコ人が犠牲になった。

 ICCのファトゥ・ベンスダ(Fatou Bensouda)主任検察官は声明で、「(イスラエル軍が)支援船団を攻撃した際、コモロ船籍のマビマルマラ(Mavi Marmara)号で戦争犯罪が行われたと信じるに足る合理的な根拠となる情報はある。しかし関係するあらゆる点を慎重に吟味した結果、この事件の捜査を経て裁判が行われたとしても、その裁判はICCのさらなる関与を正当化できるだけの『十分な重大性』を持つものにはならないという結論に達した」と発表した。

 ICCは、大量虐殺(ジェノサイド)や人道に対する罪、戦争犯罪といった「国際社会が懸念する最も重大な罪」を犯した者を裁くため2002年に設立された。

 ガザ支援船側の弁護士はトルコ・イスタンブール(Istanbul)で記者会見し、ICCの判断を「政治的な動機によるもの」と非難。自分たちに与えられた「司法上のあらゆる手段」を駆使して上訴する構えを示し、「これは正義と人道、尊厳が関わる闘いだ」と述べた。

 一方のイスラエルはICCの判断を歓迎しながらも、イスラエル側が「政治的な動機に基づく」訴えとみなすものに対する調査のためにICCの貴重な時間が浪費されたと指摘した。

 イスラエル外務省は声明で、この事件はイスラエルと国連(UN)がそれぞれ発足させた個別の調査委員会により「徹底的な調査」が実施済みであり、両方の調査で「イスラエル国防軍の兵士らは、事前に計画された組織的かつ致死的な暴力行為から自らの生命を守るために反撃することを余儀なくされた」と結論づけているとした上で、ICCが「世界最悪の残虐行為を裁く」ために設立された機関である以上、「そもそも予備調査の実施自体無駄だったと認識している」という見方を示した。(c)AFP/Charles ONIANS, with Dilay GUNDOGAN in Istanbul