【11月5日 AFP】宇宙開発史学者たちはいつの日か、1969年に人類が初めて月に降り立った地点の名称「静かの海基地(Tranquility Base)」と同じ畏敬の念を込めて、「アギルキア(Agilkia)」の名を呼ぶことになるのだろうか──。

 欧州宇宙機関(ESA)は4日、彗星(すいせい)探査機ロゼッタ(Rosetta)が11月12日に予定している人類史上初の彗星への着陸が行われる地点の名称に、ナイル(Nile)川にある島の名前にちなんだ「アギルキア」を選んだと発表した。

 ロゼッタは同日、実験用着陸機「フィラエ(Philae)」を67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(Comet 67P/Churyumov-Gerasimenko)の地表に送る予定。

 ロゼッタは、19世紀初めにエジプト学者らが古代エジプト文字ヒエログリフの謎を解読する手掛かりとした石板「ロゼッタストーン」にちなんで名付けられた。

 フィラエは、エジプト南部にあるナイル川の島「フィラエ島」にちなんで名付けられた。同島では1815年、ロゼッタストーン解読のカギとなったヒエログリフが刻まれた石柱が発見された。

 アギルキアはフィラエ島の近くに位置する島で、フィラエ島にあった古代エジプト王朝の神殿遺跡群がアスワンダム(Aswan Dam)によって水没の危機にさらされた際の移築先となった。

 彗星67Pは、風呂に浮かべて遊ぶアヒルの玩具のように、2つの丸い物体が首でつながったような形をしており、アヒルの額の部分にあたる場所にある着陸点はこれまで「J地点」というコードネームで呼ばれていた。

 着陸地点の呼称は公募の結果、フランスのアレクサンドル・ブルスト(Alexandre Brouste)さんの「アギルキア」が選ばれた。ブルストさんは、ドイツ西部ダルムシュタット(Darmstadt)にあるESAの宇宙管制センターに招待され、ミッションの様子を間近で見学する予定だ。

 今回の名称公募には1週間で世界135か国から8000通あまりの応募が寄せられたという。(c)AFP