スザンナさんもまた、職場の立ち話で聞いたことをきっかけに、36~37歳の時に卵子を凍結した。だが、キャリアのために家族計画を遅らせる女性について聞くたびに、怒りがこみ上げるという。「この街はいい相手を見つけるのが難しいので有名。美人で仕事にも成功しているのに、30代後半になっても独身の友達はいっぱいいる。彼女たちがもし5年前にいい人に出会っていれば、きっと(妊娠・出産を)していたでしょう」

 交際している男性が11歳年下なのも、卵子凍結を決めた理由の一つだ。「卵子凍結は彼にも心の安らぎを与えました。生物学的な時間が刻一刻と過ぎていく年齢にある女性と付き合っているのですから」

 スザンナさんはこれまで、複数の卵子を成熟させるための2週間にわたるホルモン注射と、卵子摘出手術を2度受けた。1回の費用は1万6000ドル(約180万円)。その高額な値段に最初は躊躇(ちゅうちょ)したが、友人から、その価値はあると説得された。向こう5年以内に自然妊娠できなければ、凍結した卵子を利用するつもりだという。

■間違った期待のもとにも?

 米生殖医学会は2012年、卵子凍結技術について、実験段階にはないとの見解を示しつつも、推奨はしない方針を打ち出した。同学会の報告書では「妊娠・出産を延期するためにこの技術を売り出すことは、女性に間違った期待を抱かせ、妊娠の先延ばしを助長することになる」とされている。

 だが、卵子凍結を「革命的な技術」と評するニューヨーク生殖医学会(Reproductive Medicine Associates New York)に所属する不妊治療専門家のシーバ・タレビアン(Sheeva Talebian)氏によると、需要は増加する一方だという。

 ニューヨーク大学不妊治療センター(New York University Fertility Center)のジェイミー・グリフォ(Jamie Grifo)所長によると、受精の成功率は体外受精と「比較的同等」で、30歳で55%、40歳で27%、42歳で15%、44歳で6%という。だが同氏は、卵子凍結はまだ絶対に確実な方法ではないと指摘。「これは希望であって約束ではない」と話している。(c)AFP/Brigitte DUSSEAU