【10月31日 MODE PRESS】

■アリババ上場が示す中国市場の消費熱

 中国の電子商取引最大手のアリババ集団がニューヨーク証券取引所に9月19日に上場したニュースは、そのスケールに驚かされた。1999年に創業し、わずか15年しか経っていない新興の企業の時価総額が25兆円にもなり、あのフェイスブックの時価総額も超えたのだ。背景には、いまだ消費熱が衰えぬ中国市場への強い期待感がある。

 そのような経済発展を遂げる中国の消費の中心=上海で、これまでの消費主義から脱した生き方を実践する人々を連載第11回で、取材し紹介した。(http://www.afpbb.com/articles/modepress/3022213?pid=0)。

 彼らの多くは従来のラグジュアリーな消費生活に疑念を持ち、脱・消費的な価値観を模索している。しかし、彼らの多くが語るように、現在の中国ではまだそのようなポスト消費主義の人々は少数派だ。むしろ多くの中国人は、消費欲が極めて旺盛で、中でもラグジュアリーブランドへの関心が呆れるほど強い。経済誌『エコノミスト』の調査によると、中国のラグジュアリーブランド市場は世界市場29%の規模に達しており、今やアメリカ、日本をも超えて世界最大の売り上げを誇る(中国人観光客による中国本土以外での購買も含む)。ヨーロッパ人全体の売り上げが20%でしかないことを考えると、驚異的なラグジュアリー消費熱と言っていい。

■危険水域まで達した都市と農村の格差

 しかし、中国の経済が成長し、国民の生活が全体的には豊かになっている一方で、都市部と地方民の格差が深刻となっている。「中国民生発展報告2014」によると、中国の国内個人資産の3分の1を人口の1%たらずの富裕家庭が握っている。また、それに対し貧困層を含む下位25%の家庭は、国内個人資産の1%しか所有していないのだ。さらに報告によると2012年の段階で家庭の所得格差を示すジニ係数は0.73に達したという。ジニ係数は1に近づくほど格差が開き、0.4を超えると社会不安が広がるとされているので、この数値はまさに格差がほぼ危険な状態まで広がってしまっていることを示している(参考:http://sankei.jp.msn.com/world/news/140726/chn14072617440003-n1.htm)。

 また、都市戸籍を持つ富裕家庭は給与以外にも事業収入と資産収入をもち、特に不動産を主な収入源としている人が多い。彼らの資産価格は物価、地価に比例して上昇し、富を貧困層から奪っていく悪循環をまねく。こうして都市部と農村地帯の生活状況の格差がどんどん広がっていってしまっている。