【10月31日 AFP】都市から都市へと気味の悪い流行が広がっている──邪悪な武装ピエロが街々を恐怖に陥れているのだ。まるでハリウッドの最新ヒット映画のような話だが、フランスで、現実に起きている現象だ。

 警察当局は過去数週間で、ピエロの仮装をして仏各地の街を混乱に陥れている十数人以上の若者たちの身柄を拘束した。ピエロは拳銃やナイフ、野球のバットで武装していることもあり、市民に危害を加えることもある。フランスではこの現象に対ピエロ自警団も発足するほどで、警察当局は市民の間でヒステリー状態が広がるのを抑止しようと介入に踏み切った。

 だが、なぜピエロなのだろうか。ハロウィーンの到来は関係があるのだろうか。

 米コミック「バットマン(Batman)」シリーズのジョーカー(Joker)から、米作家スティーブン・キング(Stephen King)氏の小説「IT」で子どもたちを殺す怪物まで、子どもを笑わせる存在であるはずのカラフルなピエロは、映画や小説を通じて純粋に邪悪な存在に変形した。

「もう30年以上も、邪悪なピエロというキャラクターは映画や書籍などの大衆文化に利用されてきた。その結果として、誰もが知るようなテーマが少しずつ形成されてきたのだ」と、うわさ・風説の専門家である人類学者のベロニク・カンピオンバンサン(Veronique Campion-Vincent)氏は説明する。

「都市伝説というものは、物事が見かけ通りではなく、本当の姿は違うという世界にわれわれがいるという考えに基づく。この事例の場合は、子どもたちを笑わせる陽気な存在とみなされているものの本当はとても意地が悪い存在、となる。さらにピエロは被害者とみなされることもある。ぶざまで、復讐を決意した存在として」

 これらの架空のキャラクターたちが「ピエロ恐怖症」に触発されたのか、あるいはその恐怖症によって生み出されたのかは、議論があるところだ。この恐怖症の原因はほとんど分かっていないが、過剰なメークと赤い鼻、色鮮やかな髪の毛の背後に、何が隠されているのか分からない、という点に由来すると考えられている。