【10月31日 AFP】ベルギーやオランダで発生したサラマンダーやイモリの大量死の原因は、アジア原産の菌であるとする研究論文が、30日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。この菌は、外来ペットの取引を停止しなければ北米に到達する恐れがあるという。

 ベルギー・ゲント大学(Ghent University)率いる国際研究チームは、昨年欧州で発見されたカエルツボカビの一種(学名:Batrachochytrium salamandrivorans)の起源を究明するため、4大陸の両生類動物5000匹を調査した。

 この菌は、タイ、ベトナム、日本の両生類で1861年には発見されていたが、病気の原因にはなっていなかった。このことは、菌がこれらの地域に由来することを示唆している。

 研究チームは、この菌がペットの貿易によって移動した可能性が高いことを突き止めた。この菌は、サラマンダーやイモリには脅威となる一方、カエルや、ヘビに似た四肢のない両生類のアシナシイモリには害を及ぼさない。

 菌の拡大がさらに広範囲に及ぶのは時間の問題だと、研究チームは警告している。論文の共同執筆者の一人で、米メリーランド大学(University of Maryland)の大学院生、カーリー・ミュレッツ(Carly Muletz)氏は「問題は、この菌が北米に達するかどうかではなく、いつ到達するかだ」と話す。世界に現存するサラマンダー655種のうち、北米には150種あまりが生息している。

 論文によると、この菌の保菌動物とされるシナイモリは、2001年~2009年の9年間で230万匹以上が米国にペットとして輸入されている。

 さらに大きな懸念となるのは、取引規制の不備だ。米国にはサラマンダーなどの両生類の輸入の監視を担当する政府機関が存在しないと、専門家らは指摘している。

「この問題に対して、科学者と政策立案者が協力して取り組まなければ、致命的な影響をもたらす恐れのある菌の流行が世界中に広まるのを阻止するチャンスはほとんどない」と共同執筆者の一人、カレン・リップス(Karen Lips)氏は話す。

「B. salamandrivoransのような新たな環境に持ち込まれた病原菌は、多くの生物種を非常に急速に絶滅の危機に追いやる恐れがある」と、今回の研究を率いたゲント大のアン・マルテル(An Martel)教授は述べている。(c)AFP