【10月30日 AFP】米ニューヨーク(New York) の街路を歩く女性がひっきりなしに声を掛けてくる男たちに煩わされる様子を撮影した動画がインターネット上で話題を呼び、女性や少数派の人々に対する嫌がらせ(ハラスメント)をめぐる議論が再燃している。

 2分間の動画には、マンハッタン(Manhattan)を黙って歩くTシャツ・ジーンズ姿の女優ショシャナ・B・ロバーツ(Shoshana B. Roberts)さんが、すれ違う男たちから口々に「ヘイ、ベイビー」「やあ、かわいこちゃん」などと声を掛けられる様子が映っている。

 ロバーツさんが無視して通り過ぎると、男たちは失礼な態度だととがめ、「笑ってよ」「君をきれいだと言っている人がいるんだ。もっと感謝しなきゃ」などと忠告してくる。

「10 Hours of Walking in NYC as a Woman(女性としてニューヨーク市を歩く10時間)」と題されたこの動画は、28日に動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」に投稿され、再生回数は既に980万回を超えた。女性や社会的少数派に対する路上での嫌がらせ撲滅を掲げる慈善団体「ホラバック(Hollaback!)」のために制作されたものだ。

 動画に登場する男の1人は、約5分間にわたって無言でロバーツさんと並んで歩き続け、ロバーツさんをあからさまに警戒させた。

 ロバーツさんは計10時間歩き回る中で100回以上、言葉による嫌がらせを受けたという。片目をつぶって合図してきたり、口笛を鳴らしたりした人は数え切れないほどいたという。

■動画公開後、ネットで嫌がらせも

 投稿された動画の再生回数が上げるにつれ、ロバーツさんはネット上で暴力的な脅迫を受けるようになったとAFPに語った。「メールで寄せられた反応の大半は好意的なものだったけれど、残念ながら否定的な意見もあった。けがをするぞ、殺してやる、などと書かれたものもあった。安全でないと感じるので、警察に相談するつもりだ」

 ホラバックによれば、ユーチューブのコメント欄にも、ロバーツさんをレイプしてやるなどの脅迫文が投稿された。また、路上でのこうした嫌がらせは、女性や有色人種、同性愛者、トランスジェンダーなどが特に多く経験しているという。

 カメラをリュックサックに隠してロバーツさんの前を歩くという手法でこの動画を撮影したロブ・ブリス(Rob Bliss)氏は「白昼、路上で行われているこうした嫌がらせが人の目にどう映り、人をどのような気持ちにさせているのか、男たちに見せてやりたかった」とAFPの取材にコメント。女性たちに向けては、次のように語った。

「女性たちがそれぞれの経験を声に出して訴えられるように、少しでも力づけたかった。路上での嫌がらせの多くは、女性たち自身でなくせるものではない」(c)AFP