【10月30日 AFP】米連邦捜査局(FBI)が、爆破脅迫事件の容疑者を特定するため米紙シアトル・タイムズ(Seattle Times)を装ったウェブサイトを作成し、米AP通信(Associated Press)をかたる偽の記事を掲載していたことが分かり、報道関係者から激しい批判を浴びている。

 この偽記事が作られたのは2007年だが、アメリカ自由人権協会(American Civil Liberties UnionACLU)の研究員クリストファー・ソゴイアン(Christopher Soghoian)氏が27日、関連文書へのリンクをマイクロブログのツイッター(Twitter)に投稿したことから問題が表面化した。

 ソゴイアン氏は、「FBIによる報道機関へのなりすまし行為だ。米中央情報局(CIA)が行った偽の予防接種作戦と同じく、非常に無責任で、絶対に容認できない」と述べている。

 このほど明らかになった文書によると、FBIはシアトル(Seattle)の高校に爆弾を仕掛けたとする脅迫事件の容疑者の居場所を特定する目的で、容疑者に関する偽記事を作成。この記事へのリンクを、SNS「マイスペース(MySpace)」の容疑者のアカウント宛てに送った。容疑者がリンクをクリックすると、容疑者の居場所を特定できるマルウエアがインストールされる仕組みになっていた。

■「報道の自由への侮辱」

 社名を利用されたAP通信とシアトル・タイムズは、憤りを表明している。AP通信広報部のポール・コルフォード(Paul Colford)氏は声明で「FBIの策略は、AP通信の名を侵害し、APの信頼を傷つけた」と批判した。

 シアトル・タイムズは、キャシー・ベスト(Kathy Best)編集長が「一線を越えただけでなく、あるべき一線を消してしまった」「激怒している」との声明を紙面で発表。28日には編集委員会が、FBIの行為は報道の自由を侮辱するものだと糾弾し、容疑者が実際に逮捕され有罪判決を受けたことで「自由社会における報道の役割を軽視した言語道断な政府の行為が正当化されることはない」と非難した。

■「非常にまれ」な捜査手法?

 一方のFBIは、作成した偽ウェブサイトについて、シアトル・タイムズのサイトと似せてはあるが同紙の名称は利用していないと反論している。

 FBIのフランク・モントヤ(Frank Montoya)氏は29日、AFPに送付した声明で、「問題の捜査においてわれわれが行った努力は全て、(米ワシントン州)マリーズビル(Marysville)の高校で(24日に)起きた銃乱射事件のような悲劇を防ぐのが目的だった」と主張。こうした手法をFBIが利用するのは「非常にまれで、脅威を解決できる確証が十分ある場合に限られる」と弁解した。(c)AFP