【10月24日 AFP】約4億5800万年前、2個の小惑星が地球に激突し、現在のスウェーデンで見られる衝突クレーターを形成したとの研究論文が、23日の英科学誌ネイチャー(Nature)系のオンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」で発表された。

 スペイン・宇宙生物学センター(Centre for AstrobiologyCAB)の科学者らの研究チームによると、この出来事の発端は、そのさらに約1200万年前に小惑星帯で発生した、太陽系史上「最大級の宇宙大惨事の一つ」である強大な衝突にまでさかのぼることができるという。

 この衝突により、直径200キロの小惑星はばらばらに砕け、大きな岩の塊を周囲にまき散らした。その一部は、後に地球の軌道を横断。論文によると、そのうちの2つが、地球と激突したという。場所は、現在のスカンディナビア(Scandinavia)地域で、当時は周辺一帯に浅い海が広がっていた。

 地殻の隆起をもたらしたこの衝突の痕跡は、スウェーデン中部に存在する。同国の都市エステルスンド(Östersund)の約20キロ南に位置する直径7.5キロのロックネ(Lockne)クレーターと、マリンゲン(Malingen)近郊にある直径700メートルのクレーターだ。

 今回の研究は、互いに16キロしか離れていないこれらクレーターが、2個一組で飛来した「二重小惑星」による二重衝突で形成された極めてまれなケースだとする長年の推測を裏付けるものとなった。

 研究チームは、これらのクレーターで掘削調査を行い、衝突の衝撃で変成した堆積物の痕跡を探した。さらにクレーターを取り巻くように広がる衝突噴出物をマッピングしたところ、衝撃ではじき飛ばされた崩壊堆積物はクレーターを中心にリング状に広がっており、内部のクレーターから最大数十キロ離れた地点にまで達していた。

 ロックネの衝突クレーターは全長約600メートルの天体によって形成され、マリンゲンの衝突クレーターは全長約150メートルの天体だったと研究チームは指摘している。これら天体については、いわゆる「がれきの集まり」の小惑星か、多数の破片がひと塊で飛来したものだという。

 ただ「二重小惑星」については、天体物理学の分野で議論の的になっている。

 地球に接近する小惑星のモデルは、これら天体の約16%が2個一組で飛来していることを示唆しているが、地球上で現在知られているクレーター188個のうち、二重小惑星の有力な候補とみられているのは、カナダ、ロシア、ドイツ、フィンランド、ブラジルにある10個にすぎない。

 4億5800万年前に起きた二重衝突は、小惑星帯での大規模分裂の発生後に地球に降り注いだ隕石(いんせき)の「雨」の一部とかんがえられており、これによって地球の気候と生態系に劇的な結果がもたらされ、オルドビス紀の生物大放散事変(Great Ordovician Biodiversification Event)と呼ばれる生物種の爆発的増加を促したとの説を唱える専門家もいる。(c)AFP