【10月22日 AFP】西アフリカでまん延している致死性の高いエボラ出血熱と最前線で闘っている緊急医療援助団体「国境なき医師団(Doctors Without BordersMSF)」は21日、エボラ出血熱から回復した患者が1000人に達したと発表した。

 1000人目の回復者となったのは、リベリア人のコリー・ジェームズ(Kollie James)さん(18)。MSFは声明で、「西アフリカでエボラ出血熱の感染が拡大し始めて以降、4500人以上をMSFの治療センターに受け入れた。うちエボラウイルスへの感染が確認されたのは2700人以上に上った」と述べた。

「命を落としたり症状に苦しんだりする人が多い中で、回復を果たした事例もある。ギニア、シエラレオネ、リベリアにおけるMSFの治療プロジェクトで治療を受けた患者のうち、きょう回復者が1000人に達した」

 コリーさんの父親のアレキサンダー(Alexander James)さんは、MSFのスタッフとして働いている。アレキサンダーさんは妻と娘2人、兄弟1人をエボラ出血熱で失っている。息子までもがMSF治療センターに入院した際には絶望したという。

「コリーの姿がフェンス越しに見えたので、こう叫んだ。『息子よ、お前は私に残された唯一の希望だ。勇気を出すんだ。与えられた薬は何でも飲まないといけない』、と。コリーは答えた。『パパ、分かった。そうするよ。泣かないでパパ、僕は死なない、僕はエボラから回復してみせる。姉妹は逝ってしまった、でも僕は生き残る。パパに僕のことを誇りに思ってもらえるように』」

 アレキサンダーさんは、息子の回復を聞いてこの上なく喜んだと語っている。一方で複雑な気持ちは残る。「もちろんコリーが生き残ってくれて心からうれしい。だがわれわれを残して他界したみんなのことを思わずにはいられない」

 致死率70%とされるこの熱帯病は、西アフリカで4500人以上の命を奪い、流行の規模は史上最悪になっている。疑い例も含め7か国で9200例が報告されているが、うちリベリア、シエラレオネ、ギニアの3か国での患者が圧倒的に多い。(c)AFP