【10月21日 AFP】(一部更新、写真追加)2013年2月14日未明に自宅で発砲し、交際相手だったリーバ・スティンカンプ(Reeva Steenkamp)さん(当時29)を死亡させたとして過失致死罪で前月、有罪判決を受けた南アフリカの両足義足のランナー、オスカー・ピストリウス(Oscar Pistorius)被告(27)に対し、首都プレトリア(Pretoria)の裁判所は21日、禁錮5年の量刑を言い渡した。

 また被告にはこの他、銃の取り扱いに関する別の過失1件で、執行猶予付きの禁錮3年も言い渡された。

 これまでの公判で泣いたり、吐き気を催したりする場面もあったピストリウス被告は、量刑言い渡しの際には被告席にじっと立っていたが、額には血管が浮き出し、歯を食いしばっているようだった。

 スティンカンプさんの死をめぐり前月、ピストリウス被告はより重い殺人罪では無罪となり、過失致死罪で有罪判決を受けていた。量刑について検察側は禁錮10年を求刑し、弁護側は自宅軟禁と社会奉仕を科すべきだと主張していた。

■「刑務所内の特別な苦痛」の主張退ける

 量刑の言い渡しを行ったトコジール・マシパ(Thokozile Masipa)判事は、懲罰と犯罪抑止と更生のバランスを見出そうと試みたと述べ、また「貧しく恵まれない者のための法律と、裕福で有名な者のための法律があるとの印象を生じさせてしまえば、この国にとってそれは悲しむべき日となってしまう」と語った。

 さらに、身体に障害のある被告が刑務所内で特別な苦痛を強いられるとする弁護側の主張を退け、「確かに被告は弱い面もあるが、同時に非常に高い対処能力を持っている」と述べた。

 ピストリウス被告は裁判で、プレトリアの高級住宅地の自宅で鍵のかかったトイレのドア越しにスティンカンプさんを撃った際、中にいたのが侵入者だと思って発砲したと主張したが、マシパ判事は「殺傷能力のある武器、実弾の入った拳銃で、被告はドアに向かって1回のみならず、4回発砲している」と述べ、「トイレは狭い個室であり、ドアの後ろにいた人物が逃げる余地はなかった」とし「重大な過失」の責任があると認めた。

 国際陸上大会で活躍してきたピストリウス被告は裁判でも国際的な注目を浴び、量刑言い渡しのこの日は明け方から裁判所前に報道陣が集まった。裁判所には長い裁判を傍聴してきた被告とスティンカンプさん双方の家族や友人らが到着した。

 2012年にはロンドン五輪に史上初めて義足の選手として出場するなど多くの人々を感動させた被告だが、裁判の過程では検察側によって、銃と美女、スポーツカーに執着を持ち、気分が変わりやすい危険な若者という、かつてのスター選手の暗い側面が描き出された。今回の有罪判決と実刑の言い渡しにより、被告は輝かしいスポーツ・キャリアと巨額の契約の数々を失い、そして何よりもヒーローとしての名誉は永遠に汚されてしまった。(c)AFP/Stephanie FINDLAY