【10月20日 AFP】バチカン(ローマ法王庁)で開催されていたローマ・カトリック教会の家族のあり方に関する教義を見直す「世界代表司教会議」は19日、再婚者や同性愛者の信者の受け入れをめぐる合意に至ることなく閉幕した。同教会の方針転換を目指すフランシスコ(Francis)法王にとっては痛手となる結果だ。

 13日に公表された司教会議の中間報告書では、「同性愛者たちにはキリスト教コミュニティーに貢献できる能力と資質がある」との文章と共に、同性愛者に手をさしのべるべきとの提案がなされ、世界中に波紋が広がっていた。この中間報告書に対し、保守派は猛反発。法王庁はまだ議論は進行中であると表明し、事態の収拾を図っていた。

 法王庁のフェデリコ・ロンバルディ(Federico Lombardi)広報局長によると、会議の出席者らは、保守派司教らの懸念を反映する形で修正を加えた最終報告書を承認した。2週間に及ぶ白熱した議論を経た18日の最終採決では、同性愛者に対するより好意的な姿勢への転換や、離婚歴がある人の再婚の容認について、出席者183人のうち採択に必要な3分の2の票が集まらなかった。

 司教会議では、フランシスコ法王が推進する「罪人」に対するより寛容な姿勢への方針転換をめぐり、保守派とリベラル派が意見を衝突させた。法王は会議の席上で、来年にはそれぞれの見解が成熟し、教会が直面する多くの問題に「具体的な解決」をもたらすと確信していると表明。最終報告書は、法王の意向により、意見が分かれた部分を含む全文が公開された。

 同法王はかねて、教会が未婚の母や再婚した夫婦、同性愛者らに対しより寛容な立場を取ることを提案しており、同性愛者については「私は(その是非を)判断する立場にはない」と語り話題となっていた。19日の会議閉幕に当たっては、出席者らに対し「神による予想外の物事に直面しても自らの恐れに打ち勝つ」よう呼び掛け、「思いがけない道に導かれること」を受け入れるよう求めた。

 人権活動家らは、会議の最終報告について批判する一方で、司教らを「タブー」に挑戦させたフランシスコ法王に賞賛を送っている。

 米国の著名な同性愛者の人権擁護団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン(Human Rights CampaignHRC)」のリズベス・メレンデス・リベラ(Lisbeth Melendez Rivera)氏は、「またしても、ローマ・カトリック教会は偽善と恐怖を選ぶという過ちを犯した」「(反対派は)フランシス法王が発した包摂と敬意のメッセージを無視し、(性的少数者の)カトリック信者らの声と人生を根本的に拒絶して勝利を得た」と失望感を表明した。

 同性愛者の人権問題に取り組んでいる英国の人権活動家ピーター・タッチェル(Peter Tatchell)氏は、司教会議が同性愛者に対するより寛容な姿勢をとれなかったことは、法王にとって「個人的な敗北であり」「同性愛者の信者らにとって平手打ちだ」と語った。

 だが、司教会議での前進を見る人々もいる。 フランスの同性愛キリスト教信者グループの共同代表を務めるエリザベト・サンギリ(Elisabeth Saint-Guily)氏は「少なくともわれわれの現実が議題にのぼったことは良いこと」「提案文が承認されなかったことは残念で、影響も生まれるでしょう。議論はこれからも続いていきます」と語った。(c)AFP