■「多くが求められる環境」

 ナチヌイエ・ボルキは旧ソ連の構成国の中に46以上の支部を持つが、チームへの入会を志願する若者たちは、グループが「根城」とする、モスクワ郊外にある屋外のビアレストランで、入会が許されるまでの長い道のりを歩み始める。

 50~60台ほどのバイクが並ぶ店の前にバイクで乗り付けたのは、財政学の講師だというティムールさん(26)。ビールを片手にAFPの取材に応じ、「いつの日かチームに加われたらと思っているよ」と述べた。

 ティムールさんがグループに加わるには現メンバーによる紹介が必要で、さらに2年間、クリミア(Crimea)半島への遠征や地方都市でのパレードといったチームのさまざまなイベントに参加しなければならない。

 グループ加入後は、さらにそこから上を目指す。階級は3つあり、もしグループの規則を破ったならば、階級が下がったり、一時的にの会員資格を剥奪されることもある。

 ベニシュさんは「多くが求められる環境だ」と忠告する。

 こうした「タフガイ」的なアクティビティーに日々携わるメンバーたちだが、その一方で「若い世代の愛国心と伝統に基づくモラルおよび精神性の向上」を指導する役割も担っている。

 ベニシュさんは、中世の神学者である聖アウグスティヌス(Saint Augustine)の考え方──統一は本質的であり、自由は非本質的、そして慈悲はすべてに存する──がナチヌイエ・ボルキの哲学を要約していると述べた。

 写真やサインを求めて「外科医」の周囲にこぞって集まるモスクワ市民の姿から判断すると、ナチヌイエ・ボルキの人気に疑いはない。しばしば乱闘騒ぎ――時には深刻なケースに至る場合もある――を引き起こすにもかかわらず。(c)AFP/Anais LLOBET/Maxime POPOV