【10月2日 AFP】北米地域に生息するチョウ「オオカバマダラ」がメキシコに向けて「越冬の大移動」を行うようになったのは、数百万年前に単一の遺伝子を獲得したことに起因するとした研究論文が1日、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 論文の共同執筆者の一人、マーカス・クロンフォースト(Marcus Kronforst)氏は、「オオカバマダラに関する従来説を覆す」とした今回の研究結果について、AFPの取材に「オオカバマダラの大移動については、これまで極めて最近の現象だと一部で考えられてきたが、実は何百万年も前に進化したものであることが、今回の研究で明らかになった」と語る。

 クロンフォースト氏と専門家らの国際研究チームは、集団移動をしない種類や白い羽を持つ種類を含む世界各地のマダラチョウ101種のゲノム(全遺伝情報)を解読した。

 北米以外に生息するオオカバマダラ属のチョウの大半は熱帯原産で集団移動を行わないことから、共通の祖先も同様の特性を持ち、集団移動する性質については、かなり後になってから獲得したとする説が長年唱えられてきた。

 この説では、オオカバマダラが最初に太平洋や大西洋を横断したのは1800年代とされていた。

 だが遺伝子系統樹のマッピングの結果、オオカバマダラの起源は、約200万年前の北米地域に生息していた集団移動する性質を持つ祖先であることがわかった。

 この祖先は、約2万年前に北米から中米や南米地域に移動し、2000~3000年前にはすでに太平洋や大西洋を渡っていた可能性が高いとクロンフォースト氏は指摘した。

 現在、この種のチョウは北米から遠く離れた欧州、アフリカ、オーストラリアなどの広い範囲に生息している。

 研究チームは、動物の複雑な習性の一つである集団移動の能力が、羽の筋肉の形成と機能にかかわる単一の遺伝子に関連していることを発見して驚いたという。

 この遺伝子は、長距離飛行での酸素消費や飛行に関する代謝効率を高めることに関与していた可能性が高い。

「北米地域から出て行ったチョウたちは、集団移動能力を失った」、そして移動性の遺伝子は「変化した」とクロンフォースト氏は付け加えている。(c)AFP/Mariette LE ROUX