【10月1日 AFP】火星の表面では毎日のように強風が吹き、その力によって変化の激しい砂丘の地形が形成されているとの研究論文が、30日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。この風により形成される地形は火星探査に大きな課題をもたらしているという。

 風が火星の地形と気候を形作る要素の一つになっていることは以前から知られていた。この風によって発生する砂塵(さじん)嵐は地球から観測されることもある。

 だが火星の風の強さ、頻度、起源などに関するデータはこれまで不十分で、砂を動かすほどの強さの風は、火星のように大気が薄い惑星ではめったに発生しないだろうと多くの専門家らは推測していた。

 論文の共同執筆者の一人、米カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)惑星科学部のフランソワ・アユーブ(Francois Ayoub)氏は、AFPの取材に「火星の砂丘は現在も移動しており、その移動速度は季節によって異なることが観察された。これは、火星の地形はほとんど変化せず、砂を動かす風はめったに発生しないという広く受け入れられている見解と相反する結果だ」と語る。

 アユーブ氏を含む米国と英国の科学者らによる共同研究チームは、ニリ・パテラ(Nili Patera)砂丘地域の約40平方キロに及ぶ領域で火星の1年(687日)にわたり撮影された多数の衛星画像上で、砂紋の位置のずれを測定した。

 アユーブ氏は、「この測定結果から、砂の流量とその季節変動を推定した」としており、また砂を動かすのに必要な風の風速と風力、頻度を算出したとしている。

「火星上の風は強風になる場合があり、ハリケーン並みの風速(時速120キロ以上)に達することもある」とアユーブ氏は指摘。「今回の調査対象地域では、砂を動かす風は(1年の大半を通して)ほぼ毎日発生している」と付け加えた。

 地形の浸食率や大気中の塵(ちり)によって大きく影響される火星の気候については、火星の風に対する理解を深めることで科学的な予測が可能になると考えられる。

 これらのデータは、将来の火星探査車ミッションへの一助となるかもしれない。

 アユーブ氏は、「風と砂による負荷の正確な予測は、探査車がそれへの備えなしに『砂嵐にさらされる』のを回避するために重要になる」と説明している。(c)AFP