【9月30日 AFP】プライバシーと広告に関する方針がフェイスブック(Facebook)と対照的なことから「アンチ・フェイスブック」と呼ばれている新参の交流サイト(SNS)「Ello」(www.ello.co)が、わずか数日のうちに、人々が今、最も入会を熱望しているだろうウェブサービスへと上り詰めた。

 Elloは昨年、「プライベートSNS」として立ち上げられたが、最近になって「招待制」へと移行。これを受け、限られた入会枠に希望者が殺到したため、インターネット競売大手のイーベイ(eBay)では、「招待」が最高500ドル(約5万5000円)で売りに出されているほどだ。またここ1週間で話題が広まった結果、招待の申請数が急増し、1時間当たり3万5000件に達したとも報じられている。

 Elloの人気のポイントは、フェイスブックユーザーの不満の受け皿を狙ったともみえる単純なメッセージだ。運営会社は「Elloは広告をのせないし、あなたの個人データを第三者に販売もしない」と説明している。

 Elloは「マニフェスト」でこうも述べている。「ソーシャルネットワークは、エンパワメントのためのツールになれると私たちは考えています。欺いたり何かを強制したり、操作したりするためのツールではなく、人がつながり、創造し、生きることを喜ぶ場です。皆さんは製品ではないのです」

 またElloは、個人データを収集・販売することや、利益のために個人の社会的つながりの見取り図を作成する行為は「気味が悪く非倫理的」だと断じ、「『無料』サービスという見せかけの下に、ユーザーは押しつけがましい広告を受け取りプライバシーを失うという高い代償を支払っている」と批判している。

 米バーモント(Vermont)州を拠点とするElloは、自転車やロボットの設計を手掛けたこともあるポール・バドニッツ(Paul Budnitz)氏らアーティストやプログラマーたちによるグループが立ち上げた。バドニッツ氏は「シンプルで美しく、広告がない」ようにElloを開発したと話している。

 米メリーランド大学(University of Maryland)のソーシャルメディア専門家、ネーサン・ユルゲンソン(Nathan Jurgenson)氏は、斬新なElloの方針を歓迎している。「Elloがこれだけ注目を浴びているのは、違う政治姿勢を持つソーシャルメディアを約束しているからだ。われわれはソーシャルメディアが繁栄するのに伴い、あまりに一握りの人間たちにあまりに多大な力を渡してしまったことに気付きつつある」

 Elloの急成長は、フェイスブックに対する同性愛者コミュニティーの批判とも重なった。実名ではなくステージネームで登録されているドラァグクイーンたちのアカウントを、フェイスブックが停止し始めたからだ。一方、Elloは実名登録を義務付けていない。