【9月23日 AFP】米証券取引委員会(Securities and Exchange CommissionSEC)は19日、ニューヨーク(New York)で5年以上にわたってインサイダー取引を行っていた男らを告発した。

 内密の電話やテキストメッセージは使わず、規制当局の監視の目も届かない確実な情報伝達手段──男たちは何のテクノロジーも要らない完璧な手口を見つけたと思っていたことだろう。情報の受け渡しに使われたのは「のり付き付箋」だった。

 SECが提出した文書によると、フランク・タマヨ(Frank Tamayo)容疑者は付箋や紙ナプキンをメモ用紙として使い、株式仲買人のウラジーミル・エイデルマン(Vladimir Eydelman)容疑者にインサイダー情報を提供していた。

 タマヨ容疑者はニューヨーク市のグランド・セントラル駅(Grand Central station)でエイデルマン容疑者にメモを見せ、その後すぐに「証拠を隠滅するため」、これらを食べていた。対象とする企業についての情報は、暗号めいた書き方で記されていたという。

 タマヨ、エルダーマン両容疑者と、タマヨ容疑者の大学時代からの友人で企業弁護士のスティーブン・メトロ(Steven Metro)容疑者ら協力者らは、犯行が発覚するまでにこうした手口でおよそ560万ドル(約6億1000万円)の利益を得ていたとみられている。

 告発状によればメトロ容疑者は勤務先の弁護士事務所シンプソン・サッチャー・アンド・バートレット(Simpson Thacher & Bartlett)の顧客企業が進めている取引についての情報を入手し、タマヨ容疑者に横流ししていた。

 エイデルマン容疑者はタマヨ容疑者と会った後で職場に戻り、通常通りの顧客に対する投資勧誘を装ってタマヨ容疑者に対し、その企業に関する調査結果と株式の購入を勧める「自らの考え」を説明したメールを送信していた。

 SECはエイデルマン容疑者のこうした行動について、「自らとタマヨ容疑者の不正取引が不正ではないという根拠にするために、計画的にメールの送受信記録を作る」意図があったと指摘している。

 巨額の罰金支払いにつながるSECからの告発に加え、タマヨ容疑者は連邦法の下でも刑事責任を問われることになる。また、エイデルマン、メトロの両容疑者も同様に民事・刑事の両方の裁判を起こされる可能性がある。(c)AFP