【9月17日 AFP】紀元前2世紀に製作され、世界最古のコンピューターと称される「アンティキティラ島の機械(Antikythera Mechanism)」が見つかった難破船を、革新的な次世代型潜水服を使って調査する考古学プロジェクトが15日、エーゲ海(Aegean Sea)で始まった。

 クレタ(Crete)島とペロポネソス(Peloponnese)半島の間に位置するギリシャ領の小島アンティキティラ(Antikythera)島の沖合で1900年、海綿を採取する潜水士たちによって発見された「アンティキティラ島の機械」は、約40個の銅製の歯車からなる非常に複雑な構造を持っており、古代ギリシャ人たちが太陽系の運行周期を計測するために用いていた。同程度の機能を備えた天文時計が欧州で製作されるようになったのは、その1500年後のことだった。

 調査に使われるのは、カナダの深海探査研究所ニュイコ・リサーチ(Nuytco Research)が開発した、水深150メートルでも緻密な作業が可能な潜水服「エクソスーツ(Exosuit)」。従来の調査では、水深60メートルまでしか潜ることができなかったが、エクソスーツによってその2倍以上の潜水が可能となり、しかもより安全に、長時間にわたって作業ができる。

 1か月にわたる同調査に参加する考古学者、セオトキス・セオドゥールー(Theotokis Theodoulou)氏はAFPの取材に対し、宇宙服が膨らんだような外観を持つエクソスーツによって「作業遂行能力が向上する」と述べ、「つかむ、つまむ、握る、掘るといった作業が数時間も可能になる」と説明した。

「アンティキティラ島の機械」は、戦利品をローマ(Rome)に輸送中だったとみられる船の残骸から、優美な若者の銅像とともに発見された。考古学者らは船内とその周辺にまだ多くの考古学的遺物が未発見のまま残されているとみている。また、発見場所からさらに250メートル離れた海底に眠っているとみられる別の船の存在も確かめたいとしている。

 現在ではわずか44人の島民が暮らすのみのアンティキティラ島は、古代の重要な交易路に位置し、キリキア(Cilicia)の海賊たちの拠点ともなっていた。こうした海賊らの一部はかつて、身代金目的に若き日のユリウス・カエサル(Julius Caesar)を捕らえたこともある。カエサルは後に、自分を人質に取った海賊たち全員を追い詰め、張り付けの刑に処した。(c)AFP/Sophie MAKRIS