■映画で「間違った」描かれ方

 2001年の映画『ジュラシック・パーク3(Jurassic Park III)』には、スピノサウルスがT・レックスを襲うシーンが登場する。このシーンが実際の恐竜の世界では見ることができなかったことは、これまでにも科学者らによって指摘されていた。スピノサウルスの化石はアフリカでしか見つかっていない一方、T・レックスはスピノサウルスが姿を消した約3000万年後の北米に生息していた。

 だが、論文の共同執筆者の一人、シカゴ大学の古生物学者のポール・セレノ(Paul Sereno)氏によると、最新の研究により、このシーンにさらに疑問が投げかけられることになった。スピノサウルスは子どものための巣を陸上に作っていた可能性があるが、体の前部にかかる荷重が大きい生物であるため、硬い地面の上では、機敏には動けなかったとみられるという。

「スピノサウルスが後肢で長時間バランスを保つのは不可能だったことを、今回の証拠は示唆している」(セレノ氏)

 スピノサウルスには「陸生の肉食動物から半水生の肉食動物への移り変わりを示している身体的適応」がみられると思われるとセレノ氏は指摘する。