【9月8日 AFP】ユダヤ人から略奪した作品を含む大量の絵画をドイツ・ミュンヘン(Munich)のアパートに秘蔵していたナチス・ドイツ(Nazi)時代の画商の息子、コルネリウス・グルリット(Cornelius Gurlitt)氏(81)が、死亡する直前の5月、モネ(Claude Monet)の作品を病院にこっそり持ち込んでいたことがわかった。5日に捜査当局が発表した。

 新たに見つかったモネの作品は、病院側から遺産執行人に渡されたグルリット氏のスーツケースの中にあった。政府当局の声明によると「明るい青色で描かれた風景作品」で、遺産執行人が発見直後にミュンヘンの裁判所に届け出たのだという。

 モネ作品のカタログを参照した政府当局は、1864年に発表の「Vue de Sainte-Adresse」との類似点を指摘し、同時期の作品である可能性があるとした。

 グルリット氏のミュンヘンの自宅からは2012年に、絵画やスケッチなど1280点を超える作品が見つかっていた。この中には、ピカソ(Pablo Picasso)やシャガール(Marc Chagall)の作品も含まれており、価値総額は数億ドルに上ると推定されている。発見のきっかけとなったのは脱税容疑での捜査だった。

 生涯独身で子供もいなかったグルリット氏は、ドイツ誌の生前のインタビューで、これら作品が「人生における愛」だと語っていた。死亡する直前には、作品の本来の持ち主を探すことで政府と合意していた。

 7月にはエドガー・ドガ(Edgar Degas)やオーギュスト・ロダン(Auguste Rodin)の彫刻などさらなる作品が見つかっている。

 ナチス政権時代、グルリット氏の父親のヒルデブランド氏は、ユダヤ人から略奪あるいは強制的に買い取った芸術作品を売却する任務に着いていた。その中には、アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)政権下で「退廃的」とみなされ、ドイツの美術館から押収された前衛芸術作品もあった。

 専門家は、グルリット氏のコレクションのうち約450点が略奪されたもの、また380点が押収されたものとみている。(c)AFP