【9月6日 AFP】グリーンランド(Greenland)の気候温暖化は、北半球の他の地域と同じく約1万9000年前の氷河期末期に始まった――長年の謎だった矛盾を解決するこのような研究が4日、米科学誌サイエンス(Science)に発表された。これまでの研究では、温暖化の始まりは1万2000年前ごろとみられていた。

 最新の氷河期である最終氷期の最寒冷期にあたる約2万年前、北米と欧州北部は巨大な氷床に覆われていた。当時の地球の平均気温は、地球温暖化の基準となる産業革命以前の気温よりも、およそ4度低かった。

 その後、太陽を周回する地球の軌道が変化したことにより、1万9000年前ごろからグリーンランドに降り注ぐ太陽エネルギー量が増えた。これが海洋からの二酸化炭素(CO2)放出を促し、大気中のCO2量が徐々に増加することになった。

 だが、論文の主筆者である米オレゴン州立大学(Oregon State University)のクリスト・バイザート(Christo Buizert)氏によると、グリーンランドの氷床コアに関する過去の研究には、CO2量と降り注ぐ太陽エネルギーの増加から推定される温暖化の証拠を示したものはなかったという。

 そこで今回の研究では、これまでのように氷そのものを分析するのではなく、氷に閉じ込められた空気に含まれる窒素同位体の比率を調べることで当時の気温を推測した。

 この新手法によって研究チームは、大気中のCO2増加に伴って著しい温暖化が起きたことを突き止めた。分析によれば、1万9000年前~1万2000年前の期間にグリーンランドの気温はおよそ5度上昇していた。この数値は、気候変動モデルで予測されたものと非常に近かったという。

 この気温の上昇はいわゆる完新世の到来を告げるもので、温暖で安定した気候のもとで人類は文明を発展させることが可能となった。

 バイザート氏は、「最終退氷期は地球温暖化と気候変動が自然に起きた例」であり、「この時期を研究することは、気候システムと地表の気温がいかに敏感に大気中のCO2に反応するかという点をより深く理解する上で非常に重要だ」と述べている。(c)AFP