【9月4日 AFP】入国審査を待つ長蛇の列に手荷物受取所での混雑、そして時に高く付くこともある航空便の遅延──空の旅への需要が高まるアジア地域で、こうした問題を解消しようと空港の新設や拡張工事が急ピッチで進んでいる。

 中国やインド、フィリピン、インドネシアなどのアジア諸国では、中間所得層の空の旅への需要が増え、これがアジア太平洋地域における観光関連産業の好況につながっている。航空各社は格安航空会社の設立や航路拡大などで需要の増加に対応しているが、その一方で、空港施設側での旅客処理能力に限界が見え始めている。

 ビジネスコンサルタント会社フロスト・アンド・サリバン(Frost & Sullivan)のクリス・ドラビーニュ(Chris De Lavigne)氏はAFPの取材に対し、「アジア太平洋地域では今後10年で、350超の空港が新設される。総投資額は1000億ドル(約10兆円)を優に超えるだろう。中国で100か所以上、インドでも60か所以上。インドネシアがこれに続く」と話す。

 国連世界観光機関(UN World Tourism OrganizationUNWTO)の統計によれば、2013年に海外からアジア太平洋地域を訪れた観光客の数は、6%増の2億4800万人。他の地域に比べて伸び率が最も大きかった。

 国際空港評議会(Airports Council InternationalACI)によると、インドネシアは今後5年間で既存の237空港に加え、新たに62の空港を建設する。スカルノ・ハッタ(Soekarno-Hatta)国際空港では、13年の利用客が6000万人に達した。この数字は本来の旅客処理能力の約3倍だ。

 マレーシアでは2020年までに、年間の旅客処理能力を現在の2倍の1億人に引き上げる予定。香港も13年実績の同6000万人から、30年までに9700万人にしたい考えだ。

 豪シドニー(Sydney)を拠点とするコンサルタント会社「Center for Aviation」によると、中国では総工費110億ドル(約1兆1200億円)の新空港建設予定がある。18年の完成予定で、年間の旅客処理能力は4000万人。同国には既に、処理能力8000万人を誇るハブ空港がある。

 慢性的な混雑と老朽化が進み、決して評判がいいとは言えないフィリピン・マニラ(Manila)のニノイ・アキノ(Ninoy Aquino)国際空港でも、全面的な改修工事が計画されている。

 世界で最も高い評価を得ている空港の1つ、シンガポール・チャンギ(Changi)国際空港では、第4ターミナルが17年に開業予定で、同空港の年間の旅客処理能力は現在の5400万人から8200万人に拡大される。

 観光産業がまだ成熟していないミャンマーやバングラデシュでも空港の建設および改修が進んでいる。国際空港評議会よると、ミャンマーでは既存の空港39か所の拡張工事に加え、最大都市ヤンゴン(Yangon)に2つ目となるハンタワディ(Hanthawaddy)国際空港の建設を予定している。(c)AFP/Martin ABBUGAO