【9月1日 AFP】南極大陸周辺の海面水位は、世界平均より3割以上速いペースで上昇しており、同大陸の氷床から溶け出した水が大量に流れ込んでいることを明確に示しているとの研究論文が31日、発表された。

 英国立海洋学センター(National Oceanography Centre)のクレイグ・ライ(Craig Rye)氏率いる研究チームによると、1992年から2011年までの20年間で見られた世界的な海面上昇の平均値は約6センチだったのに対し、南極大陸周辺では約8センチだったことが、人工衛星の観測データで明らかになったという。

 またこの局所的な海面上昇には、海面部での塩分濃度の減少を伴っていることが、海洋観測船による調査で判明している。

 このような劇的な変化が発生している理由は、氷の融解の進行による淡水の流入によってしか説明できないと論文は指摘する。

「淡水の密度は海水より低いため、過剰な量の淡水が蓄積した領域では、局所的な海面上昇が起きると予測される」とライ氏は説明する。

 だが、どれほどの氷がどこから融解して消失したかを正確に突き止めることは困難だ。研究チームのコンピューターモデルによると、淡水の流入量を年間約3500億トン(誤差範囲プラスマイナス1000億トン)とすると、この上昇値を説明できるという。

 この推計値は、地上の氷床から発生する淡水と、棚氷の薄化で発生する淡水を合わせた量だ。地上部に固着した浮氷の棚氷は、氷床から流出する氷河によって形成される。

 融解水の大半は、南米大陸の方向を向く巨大な指の形をした南極半島(Antarctic Peninsula)周辺とアムンゼン海(Amundsen Sea)から流出している。

「南極氷床からの融解水の流出が加速していることにより、南極近海の広範囲では、過去20年間にわたって大きな影響が及んでいる」と論文は述べている。

 南極の氷床の安定性は、地球温暖化の平衡における大きな要因の1つとされている。

 世界最大の単一淡水源である南極氷床の大部分が融解した場合、世界各国の多くの沿岸都市が水没することが予想されている。

 だがこのリスクの正確な把握には常に不確定要素が付きまとう。その理由の一つは、降雪量の増加によって一部の地域で氷床の質量が増加することもあるからだ。

 国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)」が新たに発表した第5次評価報告書(Fifth Assessment Report)によると、南極大陸からの氷の消失は、2001年までの10年間で年間300億トンから年間1470億トンに増加したと思われるという。

 またIPCCの同報告書によると、世界の平均海水面は、1901年~2010年の110年間に計19センチ、年平均1.7ミリ上昇。さらに1993年~2010年に至っては、海面上昇の速度が年間3.2ミリに加速していた。

 IPCCは2100年までの海面上昇について、26~82センチと予測している。(c)AFP