【8月31日 AFP】人口過密の香港(Hong Kong)で最近、若年層をターゲットにした「マイクロマンション」と呼ばれる1室が超狭小な高級マンションが続々と発売されている。

 香港では以前から、最貧困層の人々が狭い土地にすし詰め状態で暮らしてきた。だが、今、不動産開発業者がせっせと宣伝しているのは、若い中間所得者層向けの高級物件だ。近代的だが、広さが16平方メートルしかないのに価格は150万香港ドル(約2000万円)もする新築ワンルームもある。

 独身の起業家マイク・コー(Mike Ko)さんは、不動産会社が想定するマイクロマンション購入層の典型だ。持ち家を手に入れたいと熱望しているが、過熱する香港不動産市場では通常のマンションに手が届かない。

「私は33歳で、自宅を切実に必要としているんです」と話すコーさんは、公共住宅で両親と同居している。こつこつと住宅購入資金を貯金してきたが、現在の不動産相場ではとても小さな物件しか買えないという。

「今の相場は高すぎる。ワンルームマンションは、最初のステップとしては良いと思う」「ワンルームで十分だ。なかなかイケていて格好いいしね」とコーさん。

■「非人道的」の声も

 超狭小マンションを切望する人がいる一方で、香港の住宅事情に憤慨している人もいる。

「狭いだけでなく、抑圧的だ。そんなところに大金を払って住むなんて、ばかげている」。地元NGO「ノー・フラット・スレイブス(No Flat Slaves)」のケネス・トン(Kenneth Tong)氏はAFPにこう述べ、適正価格の住宅が不足しているのは政府の責任だと非難した。

 香港の民主派政党・工党(Labour Party)の張超雄(Fernando Cheung)副主席は、より安価な住宅の需要が急増していることが背景にあると指摘する。「その結果、非常に狭いマンションが登場した。だが私は、マイクロマンションは難民の収容施設や地震被災者の避難所と比べても、非人道的だと思う」

 張氏によれば、広い高価格帯のマンションの買い手は中国本土の富裕層だ。小規模な住宅は、地元の若手専門職や新卒者、新婚カップルなどをターゲットにしているという。

 香港は深刻な住宅不足に直面しており、不動産相場は2009年の2倍に跳ね上がった。手頃な新築住宅の不足は、不動産開発大手に対する抗議と反感に拍車をかけている。

 こうした中で、住宅不足と不動産価格高騰の溝を埋めるべくマイクロマンションだが、その売値は多くの持ち家希望者の予算を大幅に上回っているのが現状だ。

 香港島(Hong Kong Island)東部の閑静な地区に建設中の高層マンションは、海の眺望とスペイン人デザイナーが手掛けた内装が売りで「欧州的なライフスタイル」をうたっている。海外留学経験のある独身者や若い家族がターゲットだが、面積約28平方メートルの1室の価格は、なんと500万香港ドル(約6700万円)。それでも、開発業者は「英ロンドン(London)や米ニューヨーク(New York)も部屋は狭いし、古い。うちのマンションは狭いが、きれいだ」と自信をみせている。(c)AFP/Dennis CHONG