【8月27日 AFP】牧羊犬はいかにして、たくさんのわがままなヒツジたちをあれほど効率的に同じ方向に移動させているのだろうか──数学的思考の持ち主たちを長らく悩ませてきたこの難問への答えが26日、英国王立協会(British Royal Society)の学術誌「Journal of the Royal Society Interface」のウェブサイトに掲載された。研究によると、牧羊犬は単純なルールに従っているという。

 研究チームは5ヘクタールの草地にいる訓練されたオーストラリアン・ケルピー1頭とメスのメリノ種のヒツジ46頭に、高精度の全地球測位システム(GPS)追跡装置を取り付け、GPSデータからイヌの行動や反応の引き金についてのコンピューターモデルを作成した。

■密集させて、移動させる

 鍵はヒツジの密集度だった。イヌにとっての第1のルールは、まずヒツジの後方で左右に移動してヒツジの群れを一つにまとめること。そして群れが密集したら、イヌは群れを前進させる。

 スウェーデンのウプサラ大学(Uppsala University)のダニエル・ストレムボム(Daniel Stroembom)氏は「このモデルのあらゆる段階で、イヌはヒツジの群れが十分にまとまっているかどうかを判断する。十分に密集していなかったら、イヌはヒツジの群れを密集させようとする。もしも十分に密集していれば、イヌは目標地点に向けて群れを前進させる」と説明した。

 日常的に行われる放牧や牧羊犬の競技会では、牧羊犬1頭が80頭以上のヒツジの群れを誘導することに成功している。だがこのモデルでは、これら2つのルールに従うことでイヌ1頭で100頭以上の群れを誘導することが理論的に可能なことが示唆された。

「この知見はさまざまなことに適用できる。たとえば群衆整理や環境の清掃、放牧、動物を特定の場所に接近させないようにすること、探査ロボットの集団の協調行動や誘導などだ」と英スウォンジー大学(Swansea University)のアンドリュー・キング(Andrew King)氏は述べた。(c)AFP/Richard INGHAM